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【邦画】『余命10年』ネタバレ感想レビュー--藤井道人監督の職人気質による手腕が、難病モノに潜む禍々しさを抉りだしていた

劇中で主人公が本を出すことになる出版社の名前が文芸社だったので何事かと思ったが、この映画の原作である小説は文芸社から出版されていたのであった。

【邦画】『Ribbon』ネタバレ感想レビュー--のん監督が目論む"被害者意識"からの脱却と、その先にある表現

時は2020年、美大4年生の浅川いつか(演:のん)は、卒業制作のために描いていた油絵のキャンパスを抱えて、大学から家路につく。コロナ禍のために卒業制作展が中止となり、持ち帰るしかなくなったのだ。

【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『嘘喰い』『サイキッカーZ』

最近観た邦画2作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

【邦画】『君が落とした青空』ネタバレ感想レビュー--このカップル、男のほうに問題の9割があるのに、なんでタイムリープの試練を受けるのは女なのか?

ある1日を何度も繰り返しては、恋人がトラックに轢かれる展開をどうにかして回避しようとする、毎度おなじみの話である。主人公の成長がタイムリープを抜け出すための試練となっており、その成長の過程をメインで見せたいのだろう。

【邦画】『ちょっと思い出しただけ』ネタバレ感想レビュー--なぜ今、「過去の恋愛に折り合いをつける」ブームが起きているのか?

映画『ちょっと思い出しただけ』は2021年7月26日から始まり、ある男女の何気ない日常が様子が描かれる。その次は2020年、さらにその次は2019年と、1年ごとに遡っては、その年の7月26日の様子が並べられる構成だ。

【邦画監督】三木聡監督作品レビュー--『大怪獣のあとしまつ』に残されていた作家性とは

『大怪獣のあとしまつ』だけで判断してほしくないので、三木聡監督による7作品のレビューを書きました。

【邦画】『鈴木さん』ネタバレ感想レビュー--TVで封じられた未婚イジリに堂々と対応する、いとうあさこの本領発揮

映画『鈴木さん』は、いとうあさこが主演のディストピア作品である。現人神の「カミサマ」を国家元首とする某国の小さな町。そこでは、45歳以上の未婚者は市民権を失って町から出ていくという条例が、市民投票によって施行された。

【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『ノイズ』『さがす』『桃源郷的娘』

最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

【邦画】『Pure Japanese』ネタバレ感想レビュー--ディーン・フジオカのナルシシズムを否定する行為もまた、ナルシシズムなのである

ディーン・フジオカが企画・プロデュース・主演を務めたバイオレンスアクションである。主導権が完全にある以上、ディーン・フジオカの純然たる思いが本作に反映されているとして間違いないであろう。

【邦画】『真夜中乙女戦争』ネタバレ感想レビュー--『ファイト・クラブ』から現実社会そのものを省く、内省的にもほどがある二宮健監督の作家性

指摘するのすら恥ずかしくなるくらい、『ファイトクラブ』である。本作『真夜中乙女戦争』を鑑賞後、改めて『ファイトクラブ』を観返してみたのだが、オマージュなんてレベルでは済まされない露骨な真似事が多くて驚いた。

【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『POP!』『明け方の若者たち』『静謐と夕暮』『ポプラン』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

【邦画】『コンフィデンスマンJP 英雄編』ネタバレ感想レビュー--昨今の没入感至上主義に対するアンチテーゼなのかもしれない

いつの間にやら、我々の住むこの世界は没入感至上主義となってしまったらしい。今や、映画の価値は没入感があるかどうかで決められてしまう。そんなに偉いのか、没入感。

【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『スパゲティコード・ラブ』『彼女が好きなものは』『成れの果て』『フラ・フラダンス』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

【邦画】『決戦は日曜日』ネタバレ感想レビュー--「凝り固まった現状の体制」に抗う無意味さこそが、最大のリアリズムである

坂下雄一郎監督作品を初めて観たのは、大学院の修了作品でもある『神奈川大学映像学科研究室』だった。学生の自主制作にしては自意識の発露みたいな側面は抑えめで、あくまで観客を楽しませようとする意図が強いのが珍しいと当時は思った。

【邦画】『99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE』ネタバレ感想レビュー--ネット上の誹謗中傷やマスコミの執拗な取材攻撃を"自然災害"のように扱っていいのか

木村ひさし監督は、堤幸彦監督の弟子筋と思われる。本筋とは無関係な小ネタや楽屋オチや役者のコミカルな動きやセリフなどを大量にテンポよく入れることで作品をきわめて虚構的な空間にする、堤幸彦イズムをほぼ完璧に受け継いだ作風が特徴だ。

【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『由宇子の天秤』『映画 すみっコぐらし』『ボクたちはみんな大人になれなかった』『自宅警備員と家事妖精』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

【邦画】『エッシャー通りの赤いポスト』感想レビュー--園子温監督による「既存システム」への破壊衝動は、本当に破壊なのか

園子温監督久しぶりのインディーズ映画にして、初の本格的なワークショップ映画でもある。園監督作品の大きな特徴としては、東日本大震災をきっかけに露骨になった反体制の精神と、それゆえの「既存システム」に対する破壊衝動が挙げられる。

【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『おもいで写眞』『BLUE/ブルー』『猿楽町で会いましょう』

映画館で観逃していた今年の邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

【邦画】『私はいったい、何と闘っているのか』感想レビュー--誰かの自分勝手な承認欲求が、他の誰かを救うこともある

骨格がきちんとしているからこそ、細部の詰めの甘さが気になってしまうのがもったいない。たとえば、主人公の一人称が「俺」なのにタイトルが「私」なのは、なぜ揃えられなかったのか。

【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『劇場版 ソードアート・オンライン』『愛のまなざしを』『聖地X』『宮田バスターズ(株)大長編』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

【邦画】『あなたの番です 劇場版』ネタバレ感想レビュー--パラレルワールド設定を壊さないために登場人物たちが壊されていく狂気に満ち溢れた世界

TVドラマの劇場版には、構造上どうしても生じる問題がある。通常はTVドラマの最終回の続きを描くのが主なので、すでに物語が終了した段階から話を始めなければいけないのだ。

【邦画】『吾輩は猫である!』感想レビュー--武田梨奈のアクションだけが異次元だった

地下格闘家の美那(演:武田梨奈)は、対戦相手を半殺しにしてしまい、2週間の留置場生活を送っていた。外で待っていたライバルのアンナ(演:芋生悠)に殴られる美那。

【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『そして、バトンは渡された』『愛のくだらない』『半狂乱』『ずっと独身でいるつもり?』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

【邦画】『幕が下りたら会いましょう』ネタバレ感想レビュー--松井玲奈の顔が体現する「死者のような生者」が、本当の生者となるまで

相手が死者であるゆえ通常の方法では修復できない関係性を、別の方法によって折り合いをつけるパターンの話である。この構造自体は別に珍しいものではないが、何度も言っている通り、ベタが悪いわけではない。

【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『燃えよ剣』『ひらいて』『アイの歌声を聴かせて』『カウンセラー』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

【邦画】『恋する寄生虫』感想レビュー--この寄生虫の生態、無理がありすぎじゃないか?

映画はまず、2人の登場人物の紹介から始まる。自宅アパートでコンピューターウィルスの作成に励んでいる青年・高坂賢吾(演:林遣都)は、極度の潔癖症。他者に触れられるとそこから自分の皮膚が赤黒く染まっていくような描写によって、精神的な病である高…

【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『光を追いかけて』『最強殺し屋伝説国岡 完全版』『かそけきサンカヨウ』『劇場版 ルパンの娘』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

【邦画】『プリテンダーズ』感想レビュー--カメラが捉えることに成功した"世界"は、とても無慈悲な姿だった

映画は高校の入学式のシーンから始まる。「前ならえ!」の指示に従わずあらぬ方向に手を広げたり突然歌い出す新入生・花田花梨(演:小野花梨)。教師(演:津田寛治)は、花梨を含む10名ほどを体育館に居残りさせて、何度も「前ならえ!」をさせるが、花梨…

【邦画】『総理の夫』感想レビュー--田中圭の無邪気さを何でも解決する万能薬のように扱うのは危険な風潮である

予告編にもある序盤のシーン。空港から降り立った、大きなリュックを背負って無精ひげ姿の相馬日和(演:田中圭)を記者やTVクルーが取り囲む。

【邦画】『科捜研の女 劇場版』感想レビュー--事件鑑定におけるリアリティへの異常なこだわりと、沢口靖子による非リアリティなラブコメ要素が合わさって、未曽有のミステリが誕生

普段あまり映画館で観るタイプの作品ではないので、なんだか新鮮であった。いや、ヒットしたTVドラマの劇場版なんて腐るほどあるし、それなりの数を観ている自負はあるのだが、どうもそれらとは感触が違うのである。