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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『おもいで写眞』『BLUE/ブルー』『猿楽町で会いましょう』

映画館で観逃していた今年の邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『おもいで写眞』
監督:熊澤尚人/脚本:熊澤尚人、まなべゆきこ/原作:熊澤尚人
配給:イオンエンターテイメント/上映時間:110分/公開:2021年1月29日
出演:深川麻衣、高良健吾、香里奈、井浦新、古谷一行、吉行和子

東京で夢破れて地元に戻った29歳の女性が、役所勤めの幼馴染の男に頼まれて、集合団地に住む独居老人たちの"思い出写真"(という名前の遺影写真)を撮影して回る。老人のあやふやな記憶に翻弄される経過を通して「嘘を思い出にしてもいい」と主張するが、エピソードが説明的かつ表面的なので響かない。独居老人たちが若々しく元気な人ばかりで、居住空間は奇麗に整頓されていて、しかも最後まで誰も死なない(遺影写真として使用されない)となると、あまりにファンタジーが過ぎる。ドキュメンタリー映画『東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート』が捉えていた独居老人のリアルが欠片も無い。深川麻衣の三白眼のみが記憶に残る。
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『BLUE/ブルー』
監督&脚本:吉田恵輔
配給:ファントム・フィルム/上映時間:107分/公開:2021年4月9日
出演:松山ケンイチ、木村文乃、柄本時生、東出昌大、守谷周徒、吉永アユリ、長瀬絹也、松浦慎一郎、松木大輔、竹原ピストル、よこやまよしひろ

ボクシングジムに所属するそれぞれモチベーションの方向性が違う3人の日常を追い、その通過点として組まれる試合がドラマチックに盛り上がる。計算を感じさせない構成と、実力派の役者への個性に見合ったキャスティングが見事。ボクシングに対する価値観の違いを何度も絡ませることで、人は常に他者と関わることで前に進むのだという普遍的なメッセージを提示している。けして安泰ではないであろう「今後の人生」と予感させる終わり方も最高。
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『猿楽町で会いましょう』
監督:児山隆/脚本:児山隆、渋谷悠
配給:ラビットハウス/上映時間:122分/公開:2021年6月4日
出演:金子大地、石川瑠華、柳俊太郎、小西桜子、長友郁真、大窪人衛、呉城久美、岩瀬亮、前野健太

売れないカメラマンと読者モデルの若者カップルの出会いからのあれこれを2つの視点で描写し、渋谷で夢を追う若者の焦燥感を浮き彫りにする。そんないつもの話と思いきや、何やら次第に様相が異なってくる。ある種の定型パターン通りの男に対し、定型を逸脱する女の行動が後から上書きされ、わだかまりは解消されないまま映画は終わる。この宙ぶらりんにされる感じが本作最大のオリジナリティであろう。渋谷のエアポケットのような場所に佇む古びた歩道橋が良かった。第2回未完成映画予告編大賞グランプリ。
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