ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『燃えよ剣』『ひらいて』『アイの歌声を聴かせて』『カウンセラー』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

スポンサードリンク
 

 

 

 

 

『燃えよ剣』
監督&脚本:原田眞人/原作:司馬遼太郎
配給:東宝、アスミック・エース/上映時間:148分/公開:2021年10月15日
出演:岡田准一、柴咲コウ、鈴木亮平、山田涼介、尾上右近、山田裕貴、たかお鷹、坂東巳之助、高嶋政宏、伊藤英明

子母澤寛と司馬遼太郎が日本人の脳内に植え付けた新撰組隊士の一般的なイメージを、そっくりそのまま再生している。土方歳三は愚直に信念を貫き、近藤勇は豪快な性格で人心を集め、沖田総司は病弱な優男だ。新撰組の結成から崩壊まで追うには2時間半の上映時間でもダイジェスト的になってしまいがちで、元から幕末に興味のある者からすれば物足りなさが残るかもしれないが、主流の物語を次世代に語り継ぐという意味では必要な作品である。
-----


『ひらいて』
監督&脚本:首藤凜/原作:綿矢りさ
配給:ショウゲート/上映時間:121分/公開:2021年10月22日
出演:山田杏奈、作間龍斗、芋生悠、山本浩司、河井青葉、木下あかり、板谷由夏、田中美佐子、萩原聖人

「自分が思いを寄せている人の恋人と寝る」という度を超えた情念を、その報われなさ込みで悲痛たっぷりに描写することで、観客にシンパシーを感じさせてしまう手腕はさすが。倫理からはみ出た恋愛感情に普遍性を持たせようとする企みは、半ば達成されている。原作小説は女子高校生の脳内を文章にした完全な主観なので、映画にするには客観的な視点をどのように取り込むかが鍵となる。綿矢りさ作品を映画化する際は常に発生する処理だが、本作の場合は主演の山田杏奈の顔に多くを委ねており、それが功を奏していた。
-----


『アイの歌声を聴かせて』
監督:吉浦康裕/脚本:吉浦康裕、大河内一楼/原作:吉浦康裕
配給:松竹/上映時間:108分/公開:2021年10月29日
出演:土屋太鳳、福原遥、工藤阿須加、興津和幸、小松未可子、日野聡、大原さやか、浜田賢二、津田健次郎、咲妃みゆ、カズレーザー

高校のクラスにAIを搭載した人型ロボットが転校してきて、騒動を巻き起こす。つまらない日常に異物が入り込み、常識の枠外の行動をすることで周囲の人々が感化され、世界が少し広がる。藤子・F・不二雄の系譜である王道パターンであり、後半の展開である既存社会に対する若者たちのささやかな反抗を含めて、きわめて堅実な仕上がりだ。そして何より、土屋太鳳の"声"と"歌"の突出した魅力が、作品の根幹を支えている。
-----


『カウンセラー』
監督&脚本:酒井善三
配給:Drunken Bird/上映時間:42分/公開:2021年10月30日
出演:鈴木睦海、西山真来、田中陸、松本高士、平仁、亀田梨紗、蒲池貴範

おそらく自主制作の短編だが、これが意外な掘り出し物。明日から産休に入る心理カウンセラーの元に、謎めいた女性が来診に訪れるところから始まるホラー作品。外の雨音とヤカンが沸騰する音が一瞬だけ重なるなど、不穏にさせるテクニックに目を見張る箇所が多い。現在と過去のシーンのオーバーラップ、同じ人物が無関係な2役を演じるなど、既存のホラー演出を新しい形で組み合わせて、観客をゾワゾワっとさせるための新しい表現を追求している。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020国内コンペティション短編部門出品。
-----

 

スポンサードリンク