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【邦画新作】『恋わずらいのエリー』ネタバレあり感想レビュー—無自覚系主人公が周囲の人々を成長させる、学園ラブコメらしくない構図


監督:三木康一郎/脚本:岡山一尋
配給:松竹/上映時間:108分/公開:2024年3月14日
出演:宮世琉弥、原菜乃華、西村拓哉、白宮みずほ、藤本洸大、綱啓永、小関裕太

 

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キャーキャーと歓声を上げている女子生徒の集団の視線の先にいるのは、学校のコートで華麗にテニスをプレーする、さわやかイケメン高校生・近江章(演:宮世琉弥)。近江は廊下を歩くだけで女子の塊が後ろにくっついてくるほどで、いきなり手作りクッキーを手渡されたりしている。そんな超人気者の近江の様子を、地味目の女子高校生・市村恵莉子(演:原菜乃華)は遠くから見つめているだけ。と思いきや、恵莉子は「恋わずらいのエリー」というハンドルネームで、近江とは付き合っているという設定の妄想をX(旧Twitter ちなみに、Xによく似た架空のSNSとかではなくリアルなやつ)に投稿し続けているのだ。

 

映画『恋わずらいのエリ―』は、これまで何百回も見た学園ラブコメのテンプレートで形作られたような冒頭で始まる。でもこの映画、意外と面白かった。理由のひとつは近江のキャラクター造形で、陰ではプレゼントされたクッキーを蔑ろにするような、ストレートに性格が悪いやつなのである。別に性格が悪いから素晴らしいというわけではなく、ちゃんと理解ができるキャラクターである点が重要だ。

「地味な女子に片想いされているのにイケメンが気づく」パターンは学園ラブコメの王道で、大抵はイケメンのほうがおせっかいにも寄ってくるのだが、この時のイケメンの行動理由が謎なことが多い。映画の作り手としては「片思いの相手と、こんな状況になっちゃってる!」と慌てふためく女子をコメディとして撮りたいのが先に目的としてある(その際、大抵は演者に変顔を要求する)。だが、その状況づくりのためにイケメンを無理やり動かしているため、そのためイケメンが理解不能な行動をするモンスターみたいになっていることが、ままあるのである。

本作の近江は、序盤は基本的にただの性悪なので、行動原理がわかりやすい。裏の顔を恵莉子に見られてしまうも、恵莉子が落としたスマホを覗いて「自分を彼氏だと偽ってSNSに投稿している妄想女」だと知り、互いの秘密を公言しないよう脅迫めいた取り決めをする。そこまでならともかく、その直後に「こういうのをしてほしいんだろ」とキスしようとするのは、なかなかのクズだ。恵莉子は「それは違う!」と逃げ出すのだが、しかしここまで自然だと、他の女にも同じことやってる気がするような。

 

注意:このあとの自由課金部分(払わなくてもOK)で終盤の展開に触れていますので、未見の方はネタバレにご注意ください。

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