最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。
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『光を追いかけて』
監督:成田洋一/脚本:成田洋一、作道雄
配給:ラビットハウス/上映時間:104分/公開:2021年10月1日
出演:中川翼、長澤樹、生駒里奈、中島セナ、駿河太郎、小野塚勇人、下川恭平、木村聖哉、丹野未結、日向丈、柳葉敏郎
親の都合で秋田県の田舎に引っ越してきた思春期の少年が、神秘的な雰囲気を纏った少女と出会う毎度のパターン。すぐに2人は打ち解けて互いに笑顔を見せて弱みを晒してと、少女の神秘性はいとも簡単に剥奪され、俗物に成り下がるのには、やはり毎度のことながら醒めてしまう。その根拠が地元の名産を一緒に食べただけでは説得力は皆無であるし、過疎化を問題にしながら地方に対する幻想を無邪気に信じているのが質が悪い。メインの2人以上に屈折を抱えた人物たちが周囲にたくさんいるのだから、もう少し焦点をばらけさせて、群像劇のようにしたほうが作品の締まりが良くなったかも。
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『最強殺し屋伝説国岡 完全版』
監督:阪元裕吾
配給:キングレコード/上映時間:93分/公開:2021年10月8日
出演:伊能昌幸、上のしおり、吉井健吾、松本卓也、でん一徳、申昇容、海道力也、藍海斗、中村銀次郎、田中俊介
現在ブレイク中の阪元裕吾監督が2017年に撮影した作品。殺し屋を稼業とする国岡昌幸に密着したドキュメンタリー、という体のアクション兼コメディ。もっともドキュメンタリーとしてはあり得ない映像ばかり(たまたま出会った殺し屋の銃の先についたカメラの映像とか)であるが、そこさえ目を瞑れば笑いどころは多く満足感は高い。坂本監督のジャンル映画への偏愛と、とにかく観客を楽しませようとするエンタメ性が存分に発揮されている。エントロピーの低い国岡の(演じた伊能昌幸のアドリブだという)ボソッとした一言も効果的。
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『かそけきサンカヨウ』
監督:今泉力哉/脚本:澤井香織、今泉力哉/原作:窪美澄
配給:イオンエンターテイメント/上映時間:115分/公開:2021年10月15日
出演:志田彩良、井浦新、鈴鹿央士、中井友望、鎌田らい樹、遠藤雄斗、菊池亜希子、梅沢昌代、西田尚美、石田ひかり
父親の再婚相手とその連れ子との関係に戸惑う女子高校生、という古典的な設定ですら独特の空気感に変換してしまう今泉力哉監督の手腕は並外れている。産みの母との再会、嫁姑問題を抱えている別の家庭、恋愛相談する第三者の達観したセリフなど、手垢のついた設定を肯定的に描写することで、世界はこんなにも優しさで溢れているのだと主張してくれており、ひとときの心地良さを感じることができる。しかしこれ、今泉監督にとっては手癖のレベルのような気も。
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『劇場版 ルパンの娘』
監督:武内英樹/脚本:徳永友一/原作:横関大
配給:東映/上映時間:110分/公開:2021年10月15日
出演:深田恭子、瀬戸康史、橋本環奈、小沢真珠、栗原類、どんぐり、観月ありさ、岡田義徳、小畑乃々、渡部篤郎
代々泥棒稼業の家系に生まれたためにトラブルに見舞われ苦悩する主人公、という大元からして血筋の問題がメインで横たわっているTVドラマの劇場版。さらに本作では「実は本当の両親は別で、自分は攫われて育てられた子供だった」と、当人にとっては大問題が発覚するのだが、それを責任者総出の茶番でチャンチャンと済ませる展開が凶悪すぎる。ただただ撮影当時の流行りもの(五輪とか鬼滅とか)を取り入れただけのギャグは微妙に古いせいもありスベってばかりで、同じ制作チームによる『翔んで埼玉』が大成功した要因が解らなくなった。
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