【小説】最近読んだミステリレビュー--『世界でいちばん透き通った物語』『きみはサイコロを振らない』『その謎を解いてはいけない』

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杉井光『世界でいちばん透き通った物語』

これはすごい。突飛な思い付きまでなら誰でもできるが、それを完成まで漕ぎ着ける途方もない労力には感服する。単純にどれだけ驚愕したかで"読書体験"の高低を定めるならば、生涯１位かもしれない。市川沙央の芥川賞受賞をきっかけに書籍とバリアフリーの問題が出ている今これを言うのは確実に空気が読めていないが、それでも「紙の本で読まないと意味がない」と言わざるを得ない。

世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫す 31-2)

作者:杉井　光
新潮社

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新名智『きみはサイコロを振らない』

かつて友人を亡くした男子高校生が喋らない同級生の"彼女"とともに「遊ぶと死ぬ」というゲームを探すことになるが、実は自らも呪われてしまっていた、というミステリホラー。ゲームの行方を追っていろんな人に会いに行くメインの話は冗長に感じなくもないが、主人公が囚われている過去もまたゲームの一種であるとして救済に導いていく種明かしは、なかなか圧巻。

きみはサイコロを振らない (角川書店単行本)

作者:新名智
KADOKAWA

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大滝瓶太『その謎を解いてはいけない』

黒いマントに身を包んだ中二病全開の28歳独身探偵・暗黒院真実（本名・田中友治）が、事件と無関係な他人の黒歴史を暴いては無用な混乱を起こす連作集。一本目がバカミスっぽいが、話が進むにつれて暴露される過去も重々しくなり、それとともに物語の深みも増す。助手かつ視点人物の女子高生によるキレキレのツッコミが普通にレベルが高く楽しいが、その捻りの利いた言い回しもまた別の種類の中二病である点に、構造的な仕掛けを見て取れる。