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【邦画】『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』感想レビュー—映像美は格段に素晴らしいし、人物の内面に徹した物語も悪くないのだが・・・


監督:酒井麻衣/脚本:酒井麻衣、イ・ナウォン/原作:汐見夏衛
配給:アスミック・エース/上映時間: 100分/公開:2023年9月1日
出演:白岩瑠姫、久間田琳加、箭内夢菜、吉田ウーロン太、今井隆文、上杉柊平、鶴田真由

 

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邦画の一大ジャンル「平凡な女子高校生が学校イチのイケメンと恋中っぽくなる」系の映画のイケメン役(この手の映画の男性の方の主役という意味ですが、便宜上こう呼びます)は、まずジャニーズ所属のタレントが当てがわれる。その次に特撮出身の若手俳優で、あと最近ではLDHも多くなってきた。そんな寡占状態のポジションに、JO1が参戦である。吉本興業が絡んでいるとはいえ、男性アイドルグループの縄張り争いにおいてはJO1は新進であり、しかも本作の主演・白岩瑠姫が元ジャニーズJrだった件も含めると、異例の大抜擢かもしれない。配給がアスミック・エースだから可能だったのだろうか。

ジャニーズ事務所の今後が極めて不明瞭な現状、今のうちに他事務所のアイドルグループに白羽の矢を立てるのはジャンル存続のためにも必要だ。しかし白岩瑠姫、ざっと検索してみた限りでは、配信ドラマの短編ひとつくらいしか演技経験がない(他にもあったらごめんなさい)。それがいきなりシネコン大作の主演なのだから、荷が重いのも当然ではある。必死で頑張っているのは伝わるが、演技経験のハンデはどうしようもなく、さすがに可哀想だった。

ジャニーズのように、先輩の主演作にて端役をもらって演技の実経験を積む、みたいなのができないわけだし、白岩瑠姫の責任ではない。というより、この手の映画のイケメン役にとって、演技の上手い下手は瑣末なことであり、本来はそんなに気にならないはずなのである。それよりも、まずはそのイケメンぶりに説得力を持たせるための、場を支配するような圧倒的な存在感が重要なのだから。そしてそれはアイドルを生業としている人にとっての通常営業でもある。それなのに白岩瑠姫の拙いセリフ読みが気になってしまうのは、この映画自体の作りに理由がある。

白岩瑠姫が演じる深川青磁は、学校はサボり気味だが絵画の才能に長けていて(劇中に出てくる絵画が本当に巧い。この映画、全体的に美術班の仕事が素晴らしい)、学内では教師を含めて全員から一目置かれている。校舎の屋上を根城にして、いつも1人で油絵を描いているようだ。絵の具で汚れたズボンや真っ白に染めた髪などの奇抜な見た目も相まって、ミステリアスな孤高の天才、みたいな役どころである。

注意:このあとの自由課金部分(払わなくてもOK)で終盤の展開に触れていますので、未見の方はネタバレにご注意ください。

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