注意:直接的にラストには触れていませんが、未見の方はネタバレにご注意ください。
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『リボルバー・リリー』
監督:行定勲/脚本:小林達夫、行定勲/原作:長浦京
配給:東映/上映時間:139分/公開:2023年8月11日
出演:綾瀬はるか、長谷川博己、羽村仁成、シシド・カフカ、古川琴音、清水尋也、ジェシー、佐藤二朗、吹越満、内田朝陽、板尾創路、橋爪功、石橋蓮司、阿部サダヲ、野村萬斎、豊川悦司、鈴木亮平
華麗なガンアクションによるハードボイルドな快感にしても、架空の近代日本裏面史による壮大なハッタリにしても、行定勲監督に求めるのはお門違いである。いくら大それた物語にしようが所詮はガワでしかなく、あくまで観念的な部分にのみ比重が置かれている。それにしたって偶然が乱発されるうえに陸軍がマヌケ過ぎるので、多少は辻褄を合わせて欲しいとは感じたが。綾瀬はるかは鍛えれば動ける役者のはずだが、”人形役”しか求められていないのが、なんとも不憫。あと、あんなに小っちゃい山本五十六は珍しい。
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『#ミトヤマネ』
監督&脚本:宮崎大祐
配給:エレファントハウス/上映時間:78分/公開:2023年8月25日
出演:玉城ティナ、湯川ひな、稲葉友、オラキオ、平原テツ、内野謙太、戸田昌宏、片岡礼子、安達祐実、筒井真理子
若者に絶大な人気を誇るカリスマ・インフルエンサーが、ディープフェイクアプリとコラボしたことから、自身の顔が世界中に拡散され、例えばテロリストのマスクに用いられるなど、様々な形で悪用され始める。ここまでは、リアリティの度合いはともかくとして、誰しもが一夜でスターにも攻撃対象にもされるネット社会に対する警告という如何にもな話である。だがその後、寓意は更に暴走し、主役から名もなき端役まで全ての人々は抽象性を帯び、大胆な虚構性を持って"個"とは何なのかと問いかけてくる。宮崎大祐監督の非凡な感性は本作でも健在だ。
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『春に散る』
監督:瀬々敬久/脚本:瀬々敬久、星航/原作:沢木耕太郎
配給:ギャガ/上映時間:133分/公開:2023年8月25日
出演:佐藤浩市、横浜流星、橋本環奈、坂東龍汰、松浦慎一郎、尚玄、奥野瑛太、坂井真紀、小澤征悦、片岡鶴太郎、哀川翔、窪田正孝、山口智子
邦画でも洋画でも、ボクシングを題材にした作品に共通して、劇中の試合シーンが全てをかっさらってしまう問題がある。本作も、丹念な芝居で積み上げられた濃厚な人間関係はさすが瀬々敬久監督だが、定石通りラストの長尺の試合シーンによって全てを回収するため、結局はボクシングそのものの魅力ばかりが強調されてしまう。『ケイコ、目を澄ませて』は、試合シーンに費やす時間を少なくすることで、その難を逃れていたが。なお、役者はいずれもが素晴らしく、バラエティ番組よって付随された本来であれば余計な要素を映画的に利用した片岡鶴太郎と哀川翔の使い方は抜群であり、またそれ以上に、一切の可憐さを抹消したニュータイプ橋本環奈が白眉であった。
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