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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『罪の声』『超擬態人間』『おらおらでひとりいぐも』『ジオラマボーイ・パノラマガール』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『罪の声』
監督:土井裕泰/脚本:野木亜紀子/原作:塩田武士
配給:東宝/上映時間:142分/公開:2020年10月30日
出演:小栗旬、星野源、松重豊、古舘寛治、宇野祥平、篠原ゆき子、原菜乃華、阿部亮平、尾上寛之、川口覚、阿部純子、水澤紳吾、山口祥行、堀内正美、木場勝己、橋本じゅん、桜木健一、浅茅陽子、高田聖子、佐藤蛾次郎、佐川満男、宮下順子、塩見三省、正司照枝、沼田爆、岡本麗、若葉竜也、須藤理彩、市川実日子、火野正平、宇崎竜童、梶芽衣子

ある過去の事件について、関係者らしき人に話を聞きに行くと、別の関係者の手掛かりが手に入り、さらにその関係者に会うと…。そんな数珠繋ぎが淡々と続くのみで、単調なRPGのような予定調和が繰り返されるのみ。事件を追う人物が2人いるのが差別化かもしれないが、別々に行動していた2人が遂に出会う場面も、そこから合流する展開も、特に劇的ではなく盛り上がりに欠ける。活舌の悪い老人を出したところでリアリティが担保されるわけでもない。
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『超擬態人間』
監督&脚本:藤井秀剛
配給:イオンエンターテイメント/上映時間:80分/公開:2020年10月30日
出演:杉山樹志、望月智弥、田中大貴、河野仁美、桂弘、坂井貴子、越智貴広、宮下純、安井大貴

藤井秀剛監督の前作『狂覗』にあった普遍性を持った刺激は本作では少なく、ジャンル愛好家に向けてピンポイントで狙いを絞っている。山奥にて研究施設から逃げ出した"何か"から逃げ惑う人々という序盤から始まり、スプラッタ系のホラーが好きな人には溜まらないであろう小ネタが随所に仕込まれていて、カルトムービーとして語り継がれる未来は約束されているかのよう。一方で、暗い画面と聞き取りづらいセリフのために何が起きているのか判別しづらい点が多く、瞬間刺激的な絵ヅラが連続するために物語への理解が蔑ろになってしまい、結果として作品に拒まれていると感じる人も多く出そうではある。
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『おらおらでひとりいぐも』
監督&脚本:沖田修一/原作:若竹千佐子
配給:アスミック・エース/上映時間:137分/公開:2020年11月6日
出演:田中裕子、蒼井優、東出昌大、濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎、田畑智子、黒田大輔、山中崇、岡山天音、三浦透子、六角精児、大方斐紗子、鷲尾真知子

冒頭の「映画を間違えたか?」と思わせる大仕掛けから始まり、度を越えて大胆な演出表現の連続が、ひたすら楽しい。広い一軒家で一人暮らしするお婆さんの脳内世界が、映画だからこそ可能な空間的表現によって豊かな彩りを与えられ、そのギャップによって自宅と病院を往復する毎日の単調さも際立ってくる複雑な仕掛け。年齢を重ねても過去にいつまでも囚われずに前を向くべきだという陳腐だが重要な訴えが、映画的な快楽とともに提示される。沖田修一監督の映画という媒体における虚構性への信頼感が、見事に作品と結実している。
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『ジオラマボーイ・パノラマガール』
監督&脚本:瀬田なつき/原作:岡崎京子
配給:イオンエンターテイメント/上映時間:105分/公開:2020年11月6日
出演:山田杏奈、鈴木仁、滝澤エリカ、若杉凩、平田空、持田唯颯、きいた、遊屋慎太郎、斉藤陽一郎、黒田大輔、成海璃子、森田望智、大塚寧々

かつて岡崎京子が描いた若者の空虚さを現代に蘇らせようとしたところ、時代が判然とせず魅力的でもないパラレルワールドになってしまった点で、逆説的に岡崎京子の世界観は現代では成立させられないと証明されたかのよう。原作ではインパクトのあった反倫理性が、未成年の飲酒や工事現場への侵入程度に矮小化されているため、享楽から得られる救いが無く、話は重いままになっている。現代において若者の開放を邪魔しているのは過度なコンプライアンスであると、映画が身をもって伝えているという理解でいいだろうか。
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