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【邦画】『禁じられた遊び』感想レビュー—中田秀夫監督作にしては珍しく「不条理」が論理的に形成されていた


監督:中田秀夫/脚本:杉原憲明/原作:清水カルマ
配給:東映/上映時間: 110分/公開:2023年9月8日
出演:橋本環奈、重岡大毅、ファーストサマーウイカ、正垣湊都、堀田真由、倉悠貴、MEGUMI、清水ミチコ、長谷川忍、猪塚健太、新納慎也、諏訪太朗

 

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中田秀夫監督の最近の映画は、お世辞にも成功しているとは言えない作品ばかりで思い返すに暗澹たる気持ちになるのだが、本作『禁じられた遊び』は、過去作に共通する問題点が大きく改善されていた。個人的には、中田監督作のベストかもしれない。点数でいうと58点くらい。

中田監督の最近の作品には『“それ”がいる森』『嘘喰い』『事故物件 恐い間取り』『スマホを落としただけなのに』、そして邦画最大のアイコンに育ての親が自らトドメを刺してしまった2019年の『貞子』などがある。いずれも、主人公が常識の枠外にいる強大な存在と対峙する羽目になる話だ。物語の構造自体は王道のフォーマットである。

和製ホラー映画全体の問題ではあるが、特に日本においては霊的なものイコール不条理という固定観念があるため、霊が万能すぎたり論理的にメチャクチャな事態になっても「だって不条理だから、何でもアリでしょ」と強引に押し通していることが最近多い。不条理そのものは恐怖を煽る有用な手段なのだが、単に脚本の不備のせいでおかしくなっているのを不条理を言い訳にして誤魔化すのは、如何ともしがたい。

「不条理だから何でもアリ」にすると、一見いくらでも面白い話にできそうだが、実際は逆だ。まず、襲われる主人公の側に勝ち目がないのが解り切ってしまうため、アクションやサスペンスとしての快楽は最初から諦めるしかない。あと、敵の側の行動原理そのものがおかしくなっていることが本当に多い。不条理と感じるのはあくまで主人公の側からであって、敵には敵なりの理屈やルールがなくては、「え、こいつは何がしたいの?」となってしまい、説得力に欠ける。

中田監督作においても、一応は相手も人間である『嘘喰い』『スマホを落としただけなのに』はまだしも、超常的な存在に襲われる『事故物件 恐い間取り』『貞子』には、不条理に名を借りた杜撰さが確かにあった。まあ、「冷蔵庫の中でバターを齧る太った霊」に論理なんかあるわけないのだけれど。で、本作『禁じられた遊び』だが、このような不条理の扱いが大きく改善されていたのである。

大企業に勤める伊原直人(演:重岡大毅)は、妻の美雪(演:ファーストサマー・ウイカ)と息子の春翔(演:正垣湊都)との3人家族で、庭付きの一軒家で幸せに暮らしている。しかしある日、妻と息子が交通事故に遭い、春翔は心肺停止から奇跡の復活を遂げるも美雪は亡くなってしまう。春翔は美雪の遺体からこっそりと指を持ち帰っており、庭に埋めて毎日ずっと「エロイムエッサイム」と唱えるようになる。

注意:このあとの自由課金部分(払わなくてもOK)で終盤の展開に触れていますので、未見の方はネタバレにご注意ください。

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