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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『ばるぼら』『佐々木、イン、マイマイン』『君は彼方』『真・鮫島事件』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『ばるぼら』
監督:手塚眞/脚本:黒沢久子/原作:手塚治虫
配給:イオンエンターテイメント/上映時間:100分/公開:2020年11月20日
出演:稲垣吾郎、二階堂ふみ、渋川清彦、石橋静河、美波、大谷亮介、ISSAY、片山萌美、渡辺えり

混沌とした手塚治虫の原作漫画に解りやすいテーマ性を加えて咀嚼すれば、「ミューズに狂わされたアーティストの話」に仕上げるのは最適解であろう。クリストファー・ロイドの撮影による退廃的な美的空間が作品全体を包み込むため、原作からはだいぶ整理された物語もアート性を保持しており、虚実の境目が無くなる瞬間に艶めかしさが宿る。結局のところ主演2人に「演技派への更なる飛躍」の箔をつけたのが最大の功績かもしれないが、邦画の未来を思えば、それもまた建設的ではあるか。個人的には、はじめて石橋静河を魅力的に思えたのが印象深い。
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『佐々木、イン、マイマイン』
監督:内山拓也/脚本:内山拓也、細川岳
配給:パルコ/上映時間:119分/公開:2020年11月27日
出演:藤原季節、細川岳、萩原みのり、遊屋慎太郎、森優作、小西桜子、河合優実、井口理、鈴木卓爾、村上虹郎

映画文法上からすると、おかしな所作の連続で、まずBGMのタイミングや選曲に大きな違和感を覚える。エピソードの並べ方も中盤で高校時代ばかりに偏るなど奇異であるし、本来ならば主人公ら周囲の人々の思い出の中にいる存在とするべき佐々木の視点によるシーンが当然のように挿入されるのも、意図を不明瞭にさせる。かように、はっきりと映画の作り方が下手なのだが、なぜかそこに好感を持ってしまうのは、一切の"てらい"が無いからだろうか。主人公の属性(売れない役者、同棲している元彼女など)から狙いは想像できるものの、そこを飛び越えてただただ圧倒的な熱量が上回ってくるため、それだけで好ましい。
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『君は彼方』
監督&脚本&原作:瀬名快伸
配給:ラビットハウス、エレファントハウス/上映時間:95分/公開:2020年11月27日
出演:松本穂香、瀬戸利樹、土屋アンナ、早見沙織、大谷育江、山寺宏一、木本武宏、瀬名快伸、小倉唯、仙道敦子、竹中直人、夏木マリ

現在のアニメ映画の標準と比べれば、作画崩壊だと非難されるほどの低クオリティであり、金をとってはいけないレベル。特に人物キャラの顔がアップになった時の、パーツのバランスに素人臭さが残る。そんなんでありながら、今この時代に海面を走る電車を登場させる度胸だけは一人前。もっとも本当の問題は脚本で、交通事故で意識不明になってからの生と死の狭間に迷い込む導入はいいとしても、舞台を池袋にした意味は皆無だし、ヤマ場が判然とせず主人公が行ったり来たりを繰り返すだけなので、ひたすらダレる。手堅く平均点を狙ったのに、そこにすら到達しなかった失敗作であり、カルト的な復権にも期待できない。悪い意味で、アニメ映画『二ノ国』を思い出した。
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『真・鮫島事件』
監督&脚本:長江二朗
配給:イオンエンターテイメント/上映時間:80分/公開:2020年11月27日
出演:武田玲奈、小西桜子、濱正悟、林カラス、鶴見萌、山形啓将、水島里菜、佐藤仁、しゅはまはるみ、佐野岳

20年前のネットミームと現在進行形の社会状況を混ぜ合わせたことにより、新たなホラー表現の可能性を垣間見せている。マスク着用のため目だけで行われる演技、じっくり時間をかけた手洗いの様子による恐怖をじわじわと煽る演出も興味深いが、リモート飲み会での「ふと気づいたら、部屋にひとり」という孤独感は今ならではの恐怖演出であろう。ただ、成す術もなく人が消えていく中盤以降は、不条理を言い訳にして論理の構築を放棄した、いつもの心霊ホラーになってしまうのだが。毎度のことだけど、呪いにかかる前に幽霊が出てくるのはおかしいのでは。あと、フルートは何だったの?
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