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【邦画】『交換ウソ日記』感想レビュー--きちんと練られた話だったからこそ、ある一点がどうしても許せない(※ 後半有料)


監督:竹村謙太郎/脚本:吉川菜美/原作:櫻いいよ
配給:松竹/上映時間:110分/公開:2023年7月7日
出演:高橋文哉、桜田ひより、茅島みずき、曽田陵介、齊藤なぎさ、板垣瑞生

 

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個人的に今注目している役者のひとりが、桜田ひよりである。ファッションモデルでもあり、丸顔の可愛らしい顔立ちの人で、主人公の同級生みたいなポジションで学園モノに多く出演しているのだが、なぜかぶっ飛んだ役柄ばかり演じているのだ。普段は気弱な感じを装っているが裏では陰湿なイジメどころか殺人すら行い、本性がバレるとキャハハハと高笑いして飛び回るような、そんな役。大抵、悲惨な末路を迎えている。あ、いや、そこまで過激なのは『妖怪人間ベラ』『魔法のショコラ』くらいか。ただ他の作品でも、主人公を執拗にいびったり、あるいは嫉妬に狂って暴走したりと、自己中ゆえにトラブルを起こすサイコパスみたいな役が多い。どういう事務所の方針なんだろうと、ずっと気になっている。

映画『交換ウソ日記』は、そんな桜田ひよりが主演の学園恋愛モノなのだから、自然と期待値が上がってしまう。しかも、他人に成り済ましてイケメン男子と交換日記をするのだ。一見おとなしそうにしといて裏で密かに非道なことをやっている役なんて、数多のサイコパスを演じてきた桜田ひよりにピッタリではないか。間違いなくラストシーンは、返り血を浴びて高笑いする桜田ひよりの姿のはずだ。

もちろんそれは半分冗談であり(でもちょっと本気で期待していたけど)、表面的にはよくある学園恋愛モノであったが、実のところかなり異質の仕上がりになっていた。それはやはり第一には、桜田ひよりという特異な存在感のある役者の力ゆえであるが、他にも原因と思われる要素は多く見受けられる。

 

竹村謙太郎監督は本作が映画監督デビュー作だが、TBSのドラマ『中学聖日記』『アンナチュラル』『インビジブル』などで演出を手がけており、王道の学園恋愛モノとは畑が違う。脚本は映画『ハニーレモンソーダ』で株を上げた吉川菜美であり、座組だけでもマンネリに陥らないような安心感がある。さらに、実は本作、高橋文哉を始めとする主要な男性出演者の中に、ジャニーズ所属もLDH所属もいない。これ最近では非常に珍しいことで、偏見を含む憶測ではあるのだが、思い返すと男性陣による「プロモーション的なサービスショット」みたいなものがほぼ無かったのも、それが理由だからかもしれない。

高校2年生で放送部の黒田希美(演:桜田ひより)は、昼食の時間には校内放送でオススメの曲を流している。この段階でラストシーンに何が起こるかいくつか予想が立てられるが、たぶんそのうちの一つが正解です。希美には端正な美貌で男女問わず人気の生徒会長・松本江里乃(演:茅島みずき)という親友がいて、さらには天然元気キャラの林優子(演:齋藤なぎさ)を含んだ3人と、よく一緒に行動している。

まず珍しいなと思ったのは、希美自身は内気でオドオドしている陰キャっぽいキャラクターなのだが、学園内では上位カーストの女子グループに属しているのである。陽キャの女子にも普通に話しかけられるし、合コンめいたカラオケにも誘われるし、後にイケメン先輩の元カレ(演:板垣瑞生)の存在も明らかにされる。希美視点なので感じづらいが、立場だけならイケてる女子そのものなのだ。学園恋愛モノの主人公としては、なかなか異例である。

注意:有料部分で終盤およびラストシーンの内容に触れていますので、未見の方はネタバレにご注意ください。

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