ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【邦画】最近観た邦画レビュー--『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』『怪物』『水は海に向かって流れる』

 

注意:直接的にラストには触れていませんが、未見の方はネタバレにご注意ください。

 

スポンサードリンク
 

 

『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
監督:渡辺一貴/脚本:小林靖子/原作:荒木飛呂彦
配給:アスミック・エース/上映時間:118分/公開:2023年5月26日
出演:高橋一生、飯豊まりえ、長尾謙杜、安藤政信、美波、池田良、前原滉、中村まこと、増田朋弥、白石加代子、木村文乃

超がつく大ヒット漫画の人気キャラクターによるスピンオフのNHKによる連続ドラマの劇場版で、実際にパリでのロケも行っている。いわゆる「地雷」(あまり好きな言い方ではないが)がふんだんにあるのに、薄暗く重々しい画作りと高橋一生の魂が抜けているかのような独特の佇まいによって、風格の漂う作品に仕上がっているのは素直に意外だった。とにかく「この先、どうなるんだ?」という引きの力が強いため、溜めに溜めた末での人智を超えたホラー展開も素直に飲み込める。また、作品全体を包み込む隠の力にひとりで対抗する飯豊まりえの圧倒的な陽の存在感も不思議と魅力的だ。ただ、その方法で絵画の贋作がバレないとは(しかもルーブル美術館で)到底思えないが。絵画を主題にしている以上、そこはリアリティが欲しい。
-----


『怪物』
監督:是枝裕和/脚本:坂元裕二
配給:東宝、ギャガ/上映時間:125分/公開:2023年6月2日
出演:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子

複数人の主観的視点を切り替えて同じ時間軸を繰り返すことで、ひとつの事象を多角的に浮かび上がらせている。最近流行りの手法ではあるが、それによって「一面的な事実」は「ぼんやりとしたもの」へと変化し、観客の価値観はとことん揺さぶられる。謎の言動で混乱に拍かける女子小学生や、あるいは何気なくテレビから漏れる音声など、物語の端っこで気にも止められていない存在が実は社会を歪ませている主要な原因となっているのは、たしかに肝に銘じるべきであろう。まるで世界の中心にぽっかりと空いた虚無のような真夜中の諏訪湖が、ただならぬ恐怖を煽っている。
-----


『水は海に向かって流れる』
監督:前田哲/脚本:大島里美/原作:田島列島
配給:ハピネットファントム・スタジオ/上映時間:123分/公開:2023年6月9日
出演:広瀬すず、大西利空、高良健吾、戸塚純貴、當真あみ、勝村政信、北村有起哉、坂井真紀、生瀬勝久

実は親同士に不倫の過去がある、片方が未成年という年齢差のある男女が、たまたまひとつ屋根の下で暮らすことになる。本人には何ら責任のない親の過ちに囚われ、自発的な行動によってそれを乗り越えていく様は、まさに「親殺し」と言う名の通過儀礼そのものだ。この手の作品にありがちなパターンとは逆で、登場人物たちは達観したタイプではなく人間臭さがあるので、純粋に成長を応援したくなる心地よさがある。ただ、連載を約2時間にまとめた漫画原作にありがちな「時間経過が把握しづらい」という問題が例によって発生しており、色々なことが起こっている割に数日の出来事のような印象を受けてしまう。特に、何かしらの秘密が相手に伝わるのが異様に早く、「認識のズレ」状態がすぐに解消されるため、無理矢理にでも他者を異物と認識させまいとしているかのよう。時間経過を解らなくしている大きな要因は、鼻の怪我がいつまで経っても治らないせいかと。
-----

-----

【お知らせ】

邦画レビュー本「邦画の値打ち2022」の通販を開始しました。

yagan.base.shop

-----

 

スポンサードリンク