注意:直接的にラストには触れていませんが、未見の方はネタバレにご注意ください。
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『THE FIRST SLAMDUNK』
監督&脚本&原作:井上雄彦
配給:東映/上映時間:124分/公開:2022年12月3日
出演:仲村宗悟、笠間淳、神尾晋一郎、木村昴、三宅健太
映画というジャンルの最大の特性は時間を自由に操ることだと常々思っているが、そのテクニックにおいて最大級の成功を収めている。「劇中で流れている時間」「登場人物の体感時間」「観客の感じる時間」を常にコントロールすることで、静と動を巧みに使い分け、バスケットボールの躍動感を何倍にも増幅させている。一方で、たびたび挟まれる回想が試合をぶった切り、没入感を遮ってしまっている点は否めない。スポーツの手に汗握る興奮と、感傷を突き詰めた物語性を直結させるのは、日本のスポーツ報道における常套手段だが、やはり本質的には相性が悪いのだろう。
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『ケイコ 目を澄ませて』
監督:三宅唱/脚本:三宅唱、酒井雅秋/原案:小笠原恵子
配給:ハピネットファントム・スタジオ/上映時間:99分/公開:2022年12月16日
出演:岸井ゆきの、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中島ひろ子、仙道敦子、三浦友和
生まれつき感音性難聴で両耳が聞こえないプロボクサー・ケイコを主人公として、極めて客観的かつ俯瞰的に生き様を捉えている。そしてその圧倒的な他者性を備えた映画上の視点は、他人から理解されることを諦めているケイコの主観的な視点ともシンクロするという、複雑なことをやってのけている。だからこそ、映画後半で「自分に対する一方通行の善意」を目の当たりにしたケイコの悔恨の念と新たなる決意が、観客にもダイレクトに伝わるのである。
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『かがみの孤城』
監督:原恵一/脚本:丸尾みほ/原作:辻村深月
配給:松竹/上映時間:116分/公開:2022年12月23日
出演:當真あみ、北村匠海、吉柳咲良、板垣李光人、横溝菜帆、高山みなみ、梶裕貴、麻生久美子、芦田愛菜、宮崎あおい
不登校の中学生たちが、ファンタジックな体験を経て、少しだけ前を向こうと決意する成長譚。しかし鑑賞後は、現実における容赦のない恐怖表現ばかりが記憶に残り、こんな残酷な世界をこれからも生きなくてはいけないのかと、若者への同情が先立ってしまう。はたして、それは作り手の狙いなのだろうか。作品上の引っかかりとして、ラスト近くで明かされる構造上の大ネタに登場人物たちが気づかないのはさすがに無理があるのと、その仕掛け自体の必要性が希薄になっているのは気になる。あと、大ボリュームの原作を縮めたせいだと思われるが、これ主人公が違うんじゃないかなあ。
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