注意:直接的にラストには触れていませんが、未見の方はネタバレにご注意ください。
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『断捨離パラダイス』
監督&脚本:萱野孝幸
配給:クロックワークス/上映時間:101分/公開:2023年6月30日
出演:篠田諒、北山雅康、武藤十夢、中村祐美子、関岡マーク、福澤究、高橋佳成、天希衣絵菜、古賀迅人、原岡梨絵子、荒木民雄、北島タツロウ、豊永阿紀、泉谷しげる
ゴミ屋敷専門の清掃会社の依頼人たちの様子を章立てて描写していく。片づけられない、捨てられないといった、昨今では「精神的な病気」として小難しい一般論にされがちな症状を、きわめてミニマムな個人の事情と直接的に結び付けて解りやすく理由付けし、あくまでエンタメとして昇華している。とにかく登場人物全員ともに、ダメ人間ではあるのだが魅力的であり愛おしい。依頼人からすれば悟りの境地で達観しているかのような清掃会社の青年が、冒頭の時点で大きな葛藤を抱え込んでいることが観客に示されるという(実は珍しい)構図によって、作品に単純ではない深みを与えている。
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『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』
監督:内田英治、片山慎三/脚本:山田能龍、内田英治、片山慎三
配給:東映ビデオ/上映時間:116分/公開:2023年6月30日
出演:伊藤沙莉、北村有起哉、宇野祥平、久保史緒里、松浦祐也、高野洸、中原果南、島田桃依、伊島空、黒石高大、真宮葉月、阿部顕嵐、鈴木聖奈、石田佳央、竹野内豊
6つのエピソードに別れており、2人の共同監督が3エピソードづつを演出しているが、そのせいなのか全体のまとまりがなく没入できない。完全に話が独立している訳ではなく、かといって一本の話として繋がっているわけでもないため、大きな物語の軸が定まらないのである。特に引っかかるのが、宇宙生物やらFBIやら忍者の末裔といった突拍子のない要素と、落ちぶれた元ヤクザの哀愁やホストに狂う女の絶望感といったリアルよりの要素が分離している点で、リアリティがどこにあるのか解らず混乱する。まず、このタイトルで「とある1日」の話ではないって、どうなのか。
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『君たちはどう生きるか』
監督&脚本&原作:宮崎駿
配給:東宝/上映時間:124分/公開:2023年7月14日
宮崎駿監督作品については、特に『崖の上のポニョ』以降は常に、ひとりの老人の自我がそのまま如実に刻印されている。その点で本作もまた、偉人の個人史という扱いで歴史に残るだろうし、商業性とは無縁なのに商業的に大ヒットを記録する矛盾も毎度のことだ。前宣伝を一切しなかったのも、偏屈な老人の反骨精神だったのではと、未来では(誤って)語り継がれているかもしれない。宮崎駿監督が抱える最大のフェティシズムである「液体の表現に対する異常な執着」は本作でも健在であり、鳥の大群だろうが本棚だろうが、あるいは燃え盛る炎ですら、液体のように描写される。この、ウネウネ、ドロドロ、ビシャビシャといったものへのこだわりには、三木聡監督と通じるものを感じる。宮崎駿と三木聡、同一人物の可能性も出てきた。
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