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【邦画】最近観た邦画レビュー--『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』『ロストケア』『雑魚どもよ、大志を抱け!』

 

注意:直接的にラストには触れていませんが、未見の方はネタバレにご注意ください。

 

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『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』
監督&脚本:阪元裕吾
配給:渋谷プロダクション/上映時間:101分/公開:2022年3月24日
出演:高石あかり、伊澤彩織、水石亜飛夢、中井友望、飛永翼、橋野純平、安倍乙、渡辺哲、丞威、濱田龍臣

ヒットした前作の、特に評判の良かった部分をマシマシにしており、それだけでファンの心は掴んでいる。(個人的には別物だと思うが)似ていると話題になったアニメ『リコリス・リコイル』を想起させる瞬間まであるなど、あくまで観客が楽しむことを最優先にしたサービス精神は今回も顕在。一方で阪元裕吾監督が不得手としている、リアリティラインの不安定さと単調な物語を装飾する際の粗さがポツポツ見受けられるが、完成され尽くされたアクションシーンと、主演2人はもちろんのこと登場人物たち全員の織り成す人間的な魅力によって、さほど気にならない。阪元監督作品は、常にキャラクターの作り込みによって出来が左右される。
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『ロストケア』
監督:前田哲/脚本:龍居由佳里、前田哲/原作:葉真中顕
配給:東京テアトル、日活/上映時間:114分/公開:2023年3月24日
出演:松山ケンイチ、長澤まさみ、鈴鹿央士、坂井真紀、戸田菜穂、峯村リエ、加藤菜津、やす、岩谷健司、井上肇、綾戸智恵、梶原善、藤田弓子、柄本明

真面目で人望の厚い介護士の男が、実は担当していた認知症の老人を42人も殺していたという事件を元に、家族に多大な疲弊をもたらす在宅介護の社会システム上の問題と、犯人の「被害者とその家族を救っていた」という哲学に含まれる倫理面での問題を浮き彫りにする。と、わざわざ約2時間の映画を撮らなくても、この一文で問題提起という目的は達せられてしまうのが問題。劇中では、犯人の過去や対応する検事の家庭事情も入念に語られるが、観客の感情や思考を揺さぶるような想像外の瞬間は何ひとつ無い。犯人も動機もハナから解り切っているのに前半を事件捜査の経過に費やす一方、事件を取り巻く周囲の人々の描写が少ないなど、構成バランスに疑問が多々ある。
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『雑魚どもよ、大志を抱け!』
監督:足立紳/脚本:松本稔、足立紳/原作:足立紳
配給:東映ビデオ/上映時間:145分/公開:2022年3月24日
出演:池川侑希弥、田代輝、白石葵一、松藤史恩、岩田奏、蒼井旬、坂元愛登、臼田あさ美、浜野謙太、新津ちせ、河井青葉、永瀬正敏

信州の寂れた地方を舞台に、いわゆる「悪ガキ」に属する小学生たちの、生々しくも最後は清々しい成長譚。常に力関係が変化する同級生たちの中で立ち位置を気にして行動できなくなる主人公は社会の縮図を体現しているし、そこに立ち向かうことでかつて子供だった我々も勇気を貰える。同時に、自身の親が「ただのひとりの人間」だったと知ることでひとつの成長としているのも、大いなるメッセージだ。子供時代の鬱憤と発散を劇的に見せるために、実際に子供の出演者を痛めつける相米信二監督のやり口を、方法論自体は負の遺産として断ち切ったうえで同じところを目指す試みは賞賛したいし、相米監督の撮影現場を経験している足立紳監督だからこそ、本作はその領域に到達できた。
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