ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【邦画】最近観た邦画レビュー--『ジャパニーズ スタイル』『近江商人、走る!』『嘘八百 なにわ夢の陣』『恋のいばら』

 

注意:直接的にラストには触れていませんが、未見の方はネタバレにご注意ください。

 

スポンサードリンク
 

 

『ジャパニーズ スタイル Japanese Style』
監督:アベラヒデノブ/脚本:アベラヒデノブ、敦賀零
配給:スタジオねこ/上映時間:93分/公開:2022年12月23日
出演:吉村界人、武田梨奈、三浦貴大、日高七海、佐藤玲、フェルナンデス直行、田中佐季、布施勇弥、みやび、長村航希、山崎潤

亡くなった妻の肖像画が完成させられない若き画家の男と、父親との再会に踏み出せない女が偶然出会い、成田空港から横浜辺りまでをトゥクトゥクで走る。ロードムービーにしては距離が短すぎるし、「目の部分だけ空白の油絵」ってのも観念の具体化だとしても受け入れがたい。何より、わざわざ大晦日を舞台にして「年が明けるまでに問題を解決する」というタイムリミットを設定しておきながら、いとも簡単に自分で決めたルールを破っているのが度し難い。それをもって「既存の世界を壊す」と結論付けようとしているのかもしれないが、ただのマッチポンプでしかない。
-----


『近江商人、走る!』
監督:三野龍一/脚本:望月辰
配給:ラビットハウス/上映時間:114分/公開:2022年12月30日
出演:上村侑、森永悠希、真飛聖、黒木ひかり、前野朋哉、田野優花、村田秀亮、鳥居功太郎、たむらけんじ、大橋彰、矢柴俊博、堀部圭亮、渡辺裕之、藤岡弘、、筧利夫

米問屋の丁稚が斬新なアイデアを次から次へと閃いて、町の困りごとを解決していく時代劇。斬新ってのは、たとえば茶屋の客足が落ちてきたので店の娘たちにコンサートを開かせてアイドル的な人気を狙うとか、そんな感じ。戯画的なキャラクター造形や勧善懲悪の構図を含め、お手軽に楽しめるエンターテイメントには仕上がっている。もっとも、トップダウンによって全てを解決するラストは安易ではある。それと、ここぞとばかりに登場して場の空気を支配するべきベテラン俳優が、(カツラが合っていないせいもあるが)意外にも軽さが際立っており、締まりがない。やっぱり、バラエティ番組でいじられ過ぎると、役者としての重厚さは目減りするのだろうか。
-----


『嘘八百 なにわ夢の陣』
監督:武正晴/脚本:今井雅子、足立紳
配給:ギャガ/上映時間:112分/公開:2023年1月6日
出演:佐々木蔵之介、安田章大、中村ゆり、友近、森川葵、前野朋哉、宇野祥平、塚地武雅、吹越満、松尾諭、酒井敏也、桂雀々、芦屋小雁、升毅、笹野高史

中井貴一演じる古美術商と佐々木蔵之介演じる陶芸家のコンビによるシリーズの3作目。コミカルな演技には定評のある役者陣によって、正月映画としての"お気楽さ"は、3作目にして既に確立されている。もっとも、贋作を作って騙す側を正義とする構図である以上、話の上での善悪の線引きに何がしかの強引さが必要となる。そこで今回は「本物か偽物かは関係なく、その人にとって大事なものかどうかだ」と線引き自体を放棄しているのであるが、その結論とともにスピリチュアルな商売をも曖昧なまま幕引きしているのは、さすがに危険な気もする。
-----


『恋のいばら』
監督:城定秀夫/脚本:澤井香織、城定秀夫
配給:パルコ/上映時間:98分/公開:2023年1月6日
出演:松本穂香、玉城ティナ、渡邊圭祐、中島歩、北向珠夕、吉田ウーロン太、吉岡睦雄、不破万作、阪田マサノブ、片岡礼子、白川和子

純文学的なエロスが注目されがちな城定秀夫監督だが、その才覚が最も発揮されるのは、純然たる楽しさを追求したエンターテインメントの部分であろう。男の自宅に忍び込もうと元恋人と現恋人が共闘する前半のサスペンス調かつコメディ調の展開には、つい笑ってしまう瞬間が何度もあり、ひたすら爽快だ。その過程で積み上げられた奇妙だが愛おしい女性コンビの関係性が終盤で予想外の方向へ転がるくだりには、昨今の邦画界における安易なシスターフッド礼賛へのアンチテーゼが含まれている。
-----

-----

【お知らせ】

邦画レビュー本「邦画の値打ち2022」の通販を開始しました。

yagan.base.shop

-----

 

スポンサードリンク