ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【邦画】最近観た邦画レビュー--『名探偵コナン 黒鉄の魚影』『Winny』『BLUE GIANT』

 

注意:直接的にラストには触れていませんが、未見の方はネタバレにご注意ください。

 

スポンサードリンク
 

 

『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』
監督:立川譲/脚本:櫻井武晴/原作:青山剛昌
配給:東宝/上映時間:109分/公開:2023年4月14日
出演:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、林原めぐみ、堀之紀、立木文彦、小山茉美、古谷徹、池田秀一、沢村一樹

『名探偵コナン』に限らず、長寿アニメの劇場版は、本筋(元の漫画・アニメの流れ)の展開から枝分かれさせて独立の物語にするのが基本である(その点で、『鬼滅の刃』は異例である)。そのため、本筋に大きく絡む灰原哀は扱いが難しく、過去の劇場版では脇役(都合のいい女)に徹することが多かった。だが本作は、灰原哀を出自まで含めてフィーチャーしているため、どうしたって本筋に影響を与えてしまう。後日談で強引に「今まで通り」にしようとしていたが、黒の組織に灰原哀の存在が認識されただけでも、かなりの状況変化であろう。それもあってか本作は固定ファンへの目配せに力を注いでおり、灰原&工藤は元より、「黒の組織」メンバー同士など多くの既存キャラクターの関係性に焦点を当てている。一方で『コナン』劇場版の特色であり新参者を楽しませてくれていた、非現実なほど大がかりな状況下でのスペクタクルは控えめ。ついに『コナン』も、「壮大な内輪ネタ」に舵を切ってしまうのか。
-----


『Winny』
監督:松本優作/脚本:松本優作、岸建太朗/原案:渡辺淳基
配給:KDDI、ナカチカ/上映時間:127分/公開:2023年3月10日
出演:東出昌大、三浦貴大、皆川猿時、和田正人、木竜麻生、渡辺いっけい、吉田羊、吹越満、吉岡秀隆

記憶に新しいほどの近過去に起きた、当事者の多くが今も存在している実際の事件を取り上げ、物語に変換することで事件に付随する何かしらに救済をもたらす。ハリウッドでは当然に行われている手段が、日本でも可能になったことには大いなる意義がある。ファイル共有ソフト「Winny」開発者である金子勇さんの裁判経過を事実に沿った形で追うのだが、当時の弁護士からも助言を得ており法廷シーンの細部を正確に再現しているため、作品の強度が増している。だが同時に、金子さんをテンプレ的な「社会情勢に興味のない、無垢で純粋なオタク青年」(実際の金子さんとは別人であろう)に仕立て上げることで、現実にIFの可能性を書き加えていき、ある種の救いとしている。『聖の青春』での羽生善治と同様、実在の人物に憑依というレベルで成りきっているのに圧倒的な異物さを放ち続ける東出昌大の稀有な特性に、今回も気圧される。
-----


『BLUE GIANT』
監督:立川譲/脚本:NUMBER 8/原作:石塚真一
配給:東宝映像事業部/上映時間:120分/公開:2023年2月1日
出演:山田裕貴、間宮祥太朗、岡山天音

仙台から上京してきたサックスプレイヤーの青年が、仲間を集めて舞台を重ね、ついには日本最高峰のジャズクラブに出演するまでの一連を描く。主人公は生まれ持った才能の持ち主であり大いなる中心としてブレがなく、成り上がっていくのも当然としか思えない。であれば、天才のすぐそばにいる人たちを注視せざるを得ないのだが、大して深掘りされるわけではない。何より、本作にとって肝心要の演奏シーンが、止め絵を多用しているのもありダイナミズムの欠片も無く、端的に言って退屈なのはいかがなものか。『響け!ユーフォニアム』あたりと比べるのも酷だが、「演奏すげえ」と観客に思わせなければ、この話の説得力は皆無であろう。劇中では、ある人物の演奏を「小手先の技術に頼ったつまらないプレイ」と酷評されるが、はたして本作自体、そうではなかったか?
-----

-----

【お知らせ】

邦画レビュー本「邦画の値打ち2022」の通販を開始しました。

yagan.base.shop

-----

 

スポンサードリンク