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【邦画】最近観た邦画レビュー--『すずめの戸締まり』『ある男』『母性』

 

注意:直接的にラストには触れていませんが、未見の方はネタバレにご注意ください。

 

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『すずめの戸締まり』
監督&脚本:新海誠
配給:東宝/上映時間:121分/公開:2022年11月11日
出演:原菜乃華、松村北斗、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、神木隆之介、松本白鸚

世界の命運と一個人の想いを究極の形で対比させる、毎度おなじみの新海誠監督作品。別に手数が少なく似たようなことを繰り返しているわけではなく、周囲から求められているものを愚直に提供しているだけでだろう。元は女性コンビの話だったが上からの意向で男女に変更したというエピソード、東日本大震災に対するストレートな言及、そして『天気の子』には確かにあった反骨精神を捨てたかのような配慮されたオチなどから、まるで広告代理店みたいな八方美人ぶりが徐々に見え始めている。そろそろ、我々は新海誠監督への認識を改めなければならないかもしれない。大成建設の広告とか引き受ける人なんだし。
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『ある男』
監督:石川慶/脚本:向井康介/原作:平野啓一郎
配給:松竹/上映時間:121分/公開:2022年11月18日
出演:妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、清野菜名、眞島秀和、小籔千豊、坂元愛登、山口美也子、きたろう、カトウシンスケ、河合優実、でんでん、仲野太賀、真木よう子、柄本明、小野井奈々

宮崎の片田舎で幸せな家庭を持っていたが仕事中の事故で亡くなった男が、実は戸籍売買によって別人に成りすましていたと判明する。その男が本当は何者だったのか調査を担う弁護士は、他人と入れ替わらなくてはいけなかった彼の軌跡を追ううちに、自分自身とも向き合わざるを得なくなる。戸籍やら何やらで社会から一方的に規定されるアイデンティティが実は相当に不安定であると看過し、その揺らぎの中でもなお残る人間性を露わにしようと検討している。その意味で本作には、たしかに社会に対する個の挑戦が見られる。
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『母性』
監督:廣木隆一/脚本:堀泉杏/原作:湊かなえ
配給:ワーナー・ブラザース映画/上映時間:115分/公開:2022年11月23日
出演:戸田恵梨香、永野芽衣、、三浦誠己、中村ゆり、山下リオ、高畑淳子、大地真央、吹越満、高橋侃、落井実結子

極めて人工的で奥行きの無い世界観の中で人間の根源を捉え直そうとする、湊かなえによる方法論が今回もまた展開される。廣木隆一監督は「森の中のメルヘンチックな一軒家」を始めとする原作の人工的な世界観をそのままビジュアル化しており、いつもの生々しさは控えめだ。本作のテーマはタイトル通り「母性」で、娘としてしか生きられず母になることができない戸田恵梨香を主軸に、社会によって役割を決めつけられてしまった女性たちの模様を描く。が、とにかく問題なのは「娘である」「母である」といった役割を「女には本能で染みついているどうしようもないもの」としている点で、最後までそこから逃れられない決定論的な結末を含めて、既存の社会に対する諦めの唄にしかなっていない。
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【お知らせ】

2022/12/31 コミックマーケット101の2日目にて新刊「邦画の値打ち2022」を頒布します。場所は「東ペ28a」です。

 

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