最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。
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『サイダーのように言葉が沸き上がる』
監督:イシグロキョウヘイ/脚本:イシグロキョウヘイ、佐藤大/原作:フライングドッグ
配給:松竹/上映時間:87分/公開:2021年7月22日
出演:市川染五郎、杉咲花、潘めぐみ、花江夏樹、梅原裕一郎、中島愛、諸星すみれ、神谷浩史、坂本真綾、山寺宏一、井上喜久子
まずは90年代シティポップのような鮮やかな色調に目を奪われる。その色調も相まって、ある種のノスタルジックな空間としてショッピングモールが取り扱われているのは、都市批評の先端を捉えており、そこで古典的な若い男女の淡い恋物語が語られるのも、一周回って現代的である。冒頭の犯罪行為には多少の引っかかりを覚えるものの、ヒロインのあり得ないほど天井の高い自宅や、クライマックスの強引な展開など、アニメだから許されるリアリティを最大限に利用していた。
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『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』
監督:高橋渉/脚本:うえのきみこ/原作:臼井儀人
配給:東宝/上映時間:104分/公開:2021年7月30日
出演:小林由美子、ならはしみき、森川智之、こおろぎさとみ、仲里依紗、フワちゃん、松尾駿、長田庄平、広橋涼、村瀬歩、山口太郎、齋藤彩夏、稲田徹、亀井芳子、佐久間レイ
ミステリーの構図によって容疑者という体で数多くの特徴的なキャラクターを登場させ、そのそれぞれとレギュラーキャラを絡ませて無数の小さな物語を発生させることで、きわめて多層的な作品世界を産み出している。その整理され尽くした脚本構成力は圧巻であり、今の多くの日本映画に最も必要とされている能力であろう。年を取らないままのキャラクターに、成長による変化の問題を投げつけるクライマックスも感動的である。クレヨンしんちゃんの劇場版シリーズの中でも、屈指の名作。
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『ベイビーわるきゅーれ』
監督&脚本:阪元裕吾
配給:渋谷プロダクション/上映時間:95分/公開:2021年7月30日
出演:高石あかり、伊澤彩織、三元雅芸、秋谷百音、うえきやサトシ、福島雪菜、本宮泰風、水石亜飛夢、辻凪子、飛永翼、大水洋介、仁科貴
10代の女性殺し屋コンビを主人公にして、堅実にこなす殺し屋家業とは裏腹に、なかなか思い通りに行かない"一般人の日常生活"に苦悩しつつ奮闘する様を、ユーモアたっぷりに描写する。裏社会から表へと一般的な方向とは真逆であれど、別の世界に居場所を求めて腐心する様には普遍的なシンパシーを伴い、彼女らからの愛嬌を感じずにいられない。そして邦画史上でもトップレベルのガチのアクションシーンによって、カタルシスは最高潮となるように計算されている。プロット自体は直線的で面白みに欠けるが、それは本作において物語の重要度が低いからであり、正解であった。
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『サマーフィルムにのって』
監督:松本壮史/脚本:三浦直之、松本壮史
配給:ハピネットファントム・スタジオ/上映時間:97分/公開:2021年8月6日
出演:伊藤万理華、金子大地、河合優実、祷キララ、小日向星一、池田永吉、篠田諒、甲田まひる、ゆうたろう、篠原悠伸、板橋駿谷
学生による自主制作映画を撮る過程、曖昧としたSF設定や未来描写、主にサブキャラクターにおける伏線の少なさなど、アイデアを形にするための詰めの甘さがずっと気になっていたが、ラストの高揚感によって全てが吹き飛んで許せてしまった。時代劇を偏愛して青春キラキラ映画を馬鹿にしていた主人公が、その2つは同じであると認識を改め、そのうえで戦前日本の連鎖劇を彷彿とさせるラストに繋げていく展開は、あまりに論理的に正当であるために痺れる。
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