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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『はるヲうるひと』『漁港の肉子ちゃん』『葵ちゃんはやらせてくれない』

最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『はるヲうるひと』
監督&脚本&原作:佐藤二朗
配給:AMGエンタテインメント/上映時間:113分/公開:2021年6月4日
出演:山田孝之、仲里依紗、今藤洋子、笹野鈴々音、駒林怜、太田善也、向井理、坂井真紀、佐藤二朗、大高洋夫、兎本有紀

極端な長回しにより役者に気持ちよく演技させて、その力量に全ての説得力を担保するのは、役者監督ならではの演出であろう。中でも監督自身である佐藤二朗の存在感は見応えがあり、巨体からくる圧倒的な異物感、肉厚でありながら空疎であるゆえの凄味など、ナルシシズムが良い方向に作用していて、映画全体を引き締まらせている。まあ、佐藤二朗の正しい使用法を知っていたのが佐藤二朗本人であったのは当然か。大声で叫ばせることを持って感情表現としたり、あるいはエロや暴力描写を過剰にすることで何かしらの挑戦とするあたりは、辟易としないでもないが。
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『漁港の肉子ちゃん』
監督:渡辺歩/脚本:大島里美/原作:西加奈子
配給:アスミック・エース/上映時間:97分/公開:2021年6月11日
出演:大竹しのぶ、Cocomi、花江夏樹、中村育二、石井いづみ、山西惇、八十田勇一、下野紘、マツコ・デラックス、吉岡里帆

西加奈子の原作は未読だが、「ふくよかで快活な中年女性」に求められるアナクロなイメージそのままで、主人公にとっての指針や救いのための道具に仕立てるのは、さすがに時代錯誤ではないだろうか。プロデューサー・明石家さんまが生来持っている旧主的な女性観や家族観が、世界を小さくつまらないものに狭めているような。さらには、トカゲやセミが物語と無関係に喋ったり、さんま繋がりの芸人を声優として起用など、随所に挟まれる"さんまっぽさ"が全く効果的でなく、ノイズにしかなっていない。Studio4℃の良さも(他の作品に比べると)際立っておらず消化不良。
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『葵ちゃんはやらせてくれない』
監督:いまおかしんじ/脚本:佐藤稔、いまおかしんじ
配給:キングレコード/上映時間:98分/公開:2021年6月11日
出演:小槙まこ、松嵜翔平、森岡龍、佐倉絆、三嶋悠莉、増田朋弥、田中爽一郎、三上寛

30歳で自殺した青年が、命日のたびに甦っては大学生時代のある1日にタイムスリップして、後輩の葵ちゃんとセックスしようと奮闘するが…。くだらない設定を用いつつ、二度と取り戻せない青春を繰り返すことで、そのかけがえの無さを逆説的に際立たせていく。その先に発生する、なんでもないセックス描写に、大いなる哀愁を漂わせる狙いは、充分に成功している。過去を清算することで未来へと向かわせる全体の構図は、やや強引ではあるが悪くない。
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