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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『映画 えんとつ町のプペル』『ジョゼと虎と魚たち』『私をくいとめて』『約束のネバーランド』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『映画 えんとつ町のプペル』
監督:廣田裕介/脚本&原作:西野亮廣/アニメーション制作:STUDIO4℃
配給:東宝、吉本興業/上映時間:100分/公開:2020年12月25日
出演:窪田正孝、芦田愛菜、立川志の輔、小池栄子、藤森慎吾、野間口徹、伊藤沙莉、宮根誠司、大平祥生、飯尾和樹、山内圭哉、國村隼

冒頭のhydeによるゴシック風味な歌声に合わせたハロウィン・ダンスシーンと、ゴミ処理場でのカメラアングルを豪快に動かしたアクションシーンは、さすがSTUDIO4℃の力を見せつけていてMV的な高揚感があった。だが、序盤で披露された"アニメの快楽"を超える瞬間が、中盤以降に一度も訪れず、代わりに異世界ファンタジーらしからぬ説教臭さが前面に出てきて尻すぼみな結果に。繰り返される前フリによって、ラストで何が起こるのかは自明なのだから、そこに序盤と同じだけのアニメとしてのエネルギーを注いで欲しかったが。意外なことに、主要キャストには本職ではない声優を揃えているにも関わらず、いずれの役もが激ハマりしていて驚いた。そのなかでも、最も新たな可能性を感じさせたのが、飯尾和樹。
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『ジョゼと虎と魚たち』
監督:タムラコータロー/脚本:桑村さや香/原作:田辺聖子/アニメーション制作:ボンズ
配給:松竹、KADOKAWA/上映時間:98分/公開:2020年12月25日
出演:中川大志、清原果耶、宮本侑芽、興津和幸、Lynn、松寺千恵美、盛山晋太郎、リリー

原作の書かれた時期を考えれば当然であるが、よく言えば普遍的、悪く言えば凡庸なボーイミーツガールもの。だが、生身の肉体性を排除したアニメという表現によって、少なくともテーマ性は現代でも耐えうるものに補完されてはいた。ヒーローアクションを得意とするボンズからすれば、本作は新たなる挑戦であるが、それゆえ丁寧にまとめるほうに意識が向きがちで、優等生的な結果に落ち着いていたのが物足りないところ。もっとも、アニメでしかできない表現は2人の出会いなど数ヶ所に留めたり、あるいはモノローグを排除したりなど、引き算による美学には心地よさが宿っていた。
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『私をくいとめて』
監督&脚本:大九明子/原作:綿矢りさ
配給:日活/上映時間:133分/公開:2020年12月18日
出演:のん、林遣人、臼田あさ美、若林拓也、前野朋哉、山田真歩、片桐はいり、橋本愛、岡野陽一、吉住、中村倫也

同じ原作者&監督による『勝手にふるえてろ』と大枠は似ていて、主観の中に殻を設ける女性の主人公が客観の中に足を踏み入れていく話。今回は声だけの"イマジナリーフレンド"との脳内での会話によって、主観の殻を具現化している。各エピソードに統一したテーマがあるわけではなく、またエピソードごとの強弱が判然としないために物語の格となる箇所が見えにくく、それゆえ散漫な印象になってしまっているのが残念。中途半端にコントの手法が混じっているのも気になるところ。『勝手にふるえてろ』と比較すると、小説から映像へ表現を変化させる段階での練り込みが足りなかったよう。
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『約束のネバーランド』
監督:平川雄一郎/脚本:後藤法子/原作:白井カイウ、出水ぽすか
配給:東宝/上映時間:118分/公開:2020年12月18日
出演:浜辺美波、城桧吏、板垣李光人、渡辺直美、北川景子

戯画的な誇張演技それ自体は、別段悪いことではない。そこへの可能性を突き詰めて成功したのが『半沢直樹』なわけだし。だが誇張演技にも技術が必要であり、役者への演出指導が行き届かなければ、単なる棒読みセリフとなってしまう。その点について、本作は大きくダメを打っていて、散々な出来に。知られてはいけない相手と至近距離での会話や、はてはカメラ目線の独り言まで駆使して、常に観客に向けて状況を声に出して説明してくるが、若い役者たちの不安定で覚束ない長台詞にハラハラするばかり。渡辺直美だけが作り手の意図を完璧に把握し、オーバーに抑揚のつけたセリフを披露していたが、本来はそれができる役者で固めていなければいけなかったはず。さらには、全ての説明をセリフに任せたせいで、「セリフによる発言内容は常に真実である」というセリフ至上主義が形成されており、映画というジャンルが築き上げてきた歴史を根本から否定しているかのようであった。
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