ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『JUNK HEAD』『ゾッキ』『街の上で』『バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

スポンサードリンク
 

 

 

 

 

『JUNK HEAD』
監督&脚本&原案:堀貴秀
配給:ギャガ/上映時間:99分/公開:2021年3月26日
出演:堀貴秀

たったひとりの情熱のみを原動力として、膨大な時間と手間をかけて完成させてしまったストップモーション・アニメ。その尋常ならざる制作過程は、知れば知るほど圧倒される。だが、昨今の緻密な作画が売りのアニメーションと同様、映画が始まってしばらくすれば、スクリーン全体を覆いつくす制作上の狂気には観客は慣れてしまう。それよりむしろ、壮大なSF設定を一から構成したうえで息もつかせぬヤマ場を繰り返すストーリーテリング、奇抜なものを自然に溶け込ませるオリジナリティ溢れる細部の表現、ストップモーションだからこそ表現できるギミックなどなど、アイデアを魅力的に膨らませて提示する能力に目を見張る。
-----

 

『ゾッキ』
監督:竹中直人、山田孝之、齊藤工/脚本:倉持裕/原作:大橋裕之
配給:イオンエンターテイメント/上映時間:113分/公開:2021年4月2日
出演:吉岡里帆、鈴木福、満島真之介、柳ゆり菜、南沙良、安藤政信、ピエール瀧、森優作、九条ジョー、木竜麻生、倖田來未、竹原ピストル、潤浩、松井玲奈、渡辺佑太朗、石坂浩二、松田龍平、國村隼、板垣李光人

漫画家・大橋裕之の初期の作品集が原作で、一癖ある役者3人が分担して監督を務めている。10以上の独立した話を繋げるために無理に組み立てられた相関図が、劇中の世界を極めて小さなものにしてしまっているのが気になる。また、たとえばリアリズムのバランスなど、シーンごとの統一感がバラバラだが、かといってそれぞれに強烈な個性があるわけでもなく、3人の監督が互いに牽制しているかのような、どうにも弾けない展開ばかりが並ぶので味気ない。メジャーな役者を勢揃いさせられる"政治力"に感心するだけの結果に。
-----


『街の上で』
監督:今泉力哉/脚本:今泉力哉、大橋裕之
配給:「街の上で」 フィルムパートナーズ/上映時間:130分/公開:2021年4月9日
出演:若葉竜也、穂志もえか、古川琴音、萩原みのり、中田青渚、成田遼

厄介な恋愛感情を抱えた若い男女たちによる狭い室内での会話劇という本来ヒリヒリした状況を、さも心地良いものとして提供するという、今泉力哉監督の得意技が本領発揮されている。その手腕の安定感には貫禄すら漂い、監督自らがひとつのジャンルの頂点に立っているのを誇っているかのよう。恋愛において本来はマイナスとされる、煮え切らなさやなあなあにする態度を愛おしく見せるのは、次世代的な感覚であろう。
-----


『バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら』
監督:松居大悟/脚本:ふじきみつ彦、宮本武史
配給:東宝映像事業部/上映時間:100分/公開:2021年4月9日
出演:田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一、濱田岳、柄本時生、菜々緒、高杉真宙、芳根京子

テレビ東京の人気ドラマの映画化で、手段が目的になってしまっている典型例。名のある役者が実名で大量に出演しているのが売りだが、見せ場の無いエキストラにまで有名人を使ったために登場人物の差異が無くなり、悪い意味で限りなくフラットな空間に陥っている。借りているロケ地の備品を壊す、権利関係の不明な台本を勝手に映画化するなどのNG行為を"本人役"の役者が嬉々として行っているのが犯罪的。ヒット作を矮小化しただけのパロディを並べられても白けるばかりで、バイプレーヤーに着目したことによる新鮮味は皆無。これならまだ、楽屋オチで盛り上がってくれたほうがマシだった。
-----

 

スポンサードリンク