ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【邦画】最近観た邦画レビュー--『スイート・マイホーム』『ミステリと言う勿れ』『アリスとテレスのまぼろし工場』

 

注意:直接的にラストには触れていませんが、未見の方はネタバレにご注意ください。

 

スポンサードリンク
 

 

『スイート・マイホーム』
監督:齊藤工/脚本:倉持裕/原作:神津凛子
配給:日活、東京テアトル/上映時間:113分/公開:2023年9月1日
出演:窪田正孝、蓮佛美沙子、奈緒、中島歩、里々佳、松角洋平、根岸季衣、窪塚洋介、吉田健悟、磯村アメリ、岩谷健司

新築住宅を建てた幸せな主人公一家の元に奇怪な現象が起こり始める、家をテーマにしたホラー。超常現象なのか人為的なものなのかがハッキリしないまま進むため、うまく咀嚼できない恐怖がじわじわとにじり寄ってくる感じは、なかなか“たくみ”である。役者の演技をじっくり見せるよりも、撮影や照明や音響など技術班へのこだわりが大きいのは、役者監督にしては珍しい。ただ、家を買うまでの序盤の日常描写に時間をかけて丁寧に見せている割には、エンドロール手前の大オチに関しては前フリが少なく、唐突に感じる。

-----


『ミステリと言う勿れ』
監督:松山博昭/脚本:相沢友子/原作:田村由美
配給:東宝/上映時間:128分/公開:2023年9月15日
出演:菅田将暉、松下洸平、町田啓太、原菜乃華、萩原利久、鈴木保奈美、滝藤賢一、でんでん、野間口徹、松坂慶子、松嶋菜々子、永山瑛太、角野卓造、段田安則、柴咲コウ

すでにタイトルで「ミステリではない」と主張しているので、あまりに御都合主義が過ぎて無理のある謎解き展開に文句を言うのが筋違いなのは解っている。原作漫画も、ドラマや今回の劇場版も、主眼にしているのは主人公の大学生・久能整が淡々と熱弁を振るう、きわめて現代社会的な正論だ。物語上は全く必要のない、年配男性による”女性らしさ”の押し付けに対する反論が原作からカットされなかったのも、だからであろう。もっとも、それだけでは単なる演説であり、映画としての肉付けがあったのかは疑問に残る。一応、ミステリとしての面にも触れておくと、漫画ではコマの隅にさりげなく描かれていたような伏線が、映画だと違和感バリバリの不自然な描写になっていた。さりげない行動やセリフって、映像メディアだと難しい。
-----


『アリスとテレスのまぼろし工場』
監督&脚本&原作:岡田麿里
配給:ワーナー・ブラザース映画、MAPPA/上映時間:111分/公開:2023年9月15日
出演:榎木淳弥、上田麗奈、久野美咲、八代拓、畠中祐、小林大紀、齋藤彩夏、河瀬茉希、藤井ゆきよ、佐藤せつじ、林遣都、瀬戸康史

岡田麿里監督は常に、メインとなるであろう客層に向けて物語を作っている。「これ、オマエらのことだからな」と。他の有名なアニメ映画監督のほとんどが「ねえ、ボクのことを聞いて」であるため、この所業は際立つ。時が停まり成長すると消えてしまう世界の中で、それでも感情が制御できず苦しむ若者の姿を生々しくネットリと描写するため、すでに成長を諦めている観客は自己否定されているかのように感じて戦慄するのである。それ以上に、時の停まった世界を何が何でも死守しようとする、おそらくは観客の多くと同じ立場であろうキャラクターを非常に醜くしているあたりに、表現者に対する最大級の褒め言葉としての、性根の悪さが出ている。
-----

-----

【お知らせ】

邦画レビュー本「邦画の値打ち2022」の通販を開始しました。

yagan.base.shop

-----

 

スポンサードリンク
 

この続きはcodocで購入