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【邦画新作】『恋を知らない僕たちは』ネタバレあり感想レビュー・・・どこまで行っても構造主義の枠に囚われ続ける窮屈な若者たち


監督:酒井麻衣/脚本:大北はるか/原作:水野美波
配給:松竹/上映時間:111分/公開:2024年 8月23日
出演:大西流星、窪塚愛流、齊藤なぎさ、莉子、猪狩蒼弥、志田彩良、小宮璃央

 

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どこまで行っても構造主義なのである。構造主義を一言で説明すると、社会システムの内側においては個人の思考や行動はあらかじめ決定されているとする考え方をいう。この考えを肯定するか否定するかは人それぞれとしても、本作『恋を知らない僕たちは』は、高校生の様々な恋模様を描く話だ。若者の恋愛さえも自由意思ではなく社会システムの内側で決定づけられているなんて、そんなの夢も希望もないディストピアではないか。

本作は同じ高校に通う男女6人を組み合わせていくつかの関係性を提示しているのだが、いずれもがパターン化された「恋する若者」をなぞっているだけである。登場人物の全員ともが、「恋とはこういうものだ」という無意識の刷り込みが先にあり、とにかくそのレールから外れないようにと必死になっているのだ。なんとまあ窮屈なことよ。

一例として、あるシーケンス(本筋とは絡まないサブストーリーの部分)を挙げる。ある人物が、片思いしている相手(恋人あり)が恋愛トラブルで大変なことになっているのを目撃する。もしかしたらこれで相手は恋人と別れて自分にもチャンスが巡ってくるかも、と喜んでしまった自分は酷いやつなのではないかと悩む。それに対して別の人物から「自分の気持ちを第一にすべきだ」と励まされる。この「自分の気持ちを第一に」こそまさに、「恋とは何か」という質問に対して最もパターン化された、それゆえ最もつまらない答えだ。

注意:このあとの有料有料部分において映画の内容に触れていますので、未見の方はネタバレにご注意ください。そんなにネタバレしてませんが。

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