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【邦画】最近観た邦画レビュー--『波紋』『最後まで行く』『劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ』

 

注意:直接的にラストには触れていませんが、未見の方はネタバレにご注意ください。

 

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『波紋』
監督&脚本:荻上直子
配給:ショウゲート/上映時間:120分/公開:2023年5月26日
出演:筒井真理子、光石研、磯村勇斗、安藤玉恵、江口のりこ、平岩紙、ムロツヨシ、津田絵理奈、花王おさむ、柄本明、木野花、キムラ緑子

荻上直子監督は昔からずっと、奇妙な共同体に属すれば全ては解決されるのだと、押し付けがましいほどに主張してきた。つまりカルト宗教の一側面と同等のものを無批判で肯定してきたのである(昨年の『川っぺりムコリッタ』も実質そうであった)。そんな荻上監督がカルト宗教にハマる中年女性を真正面から描くとなれば、どうしたって過去の自作への批評性からは避けられないであろう。そして、家族を含むあらゆる人間関係からの離脱を救いとする結論(エンドロール直前の、あの唐突な踊りは魂の解放に他ならない)は、明らかに過去の自作を否定している。荻上監督に、そういうことができるのかと驚いた。光石研がジャムの瓶に食パンを直接つっこむなど、何気ない描写から全ての人間は誰かにとっての悲壮な加害者であるとの真意を漂わせている。
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『最後まで行く』
監督:藤井道人/脚本:平田研也、藤井道人/オリジナル脚本:キム・ソンフン
配給:東宝/上映時間:118分/公開:2023年5月19日
出演:岡田准一、綾野剛、広末涼子、磯村勇斗、駿河太郎、山中崇、黒羽麻璃央、駒木根隆介、山田真歩、清水くるみ、杉本哲太、柄本明

2014年に公開された韓国映画の日本版リメイク。ひとつの死体を巡って攻防する悪人2名を演じているのが、アウトローな演技と本格的なアクションにおいては信頼のおける役者なので、安心してスリルを楽しめる。どちらの役柄も、悪とはいえ随所で情けなさを見せる小物なのだが、組織や家族といった抑圧から解放されるとともに顔つきが変わり、最後には利害を超えた上での死闘を繰り広げる。この爆発力には単純に興奮するし、ラストだけでも満足感は大きい。結局は巨大な存在の手のひらで泳がされていただけだったというオチも、その報われない無意味さが良い形で余韻となっている。ただ、死体がバレそうになって慌てて取り繕うなどのコメディ描写が、テンポが悪く巧くないのは気になった。職人的に何でもソツなくこなす藤井道人監督の、数少ない苦手ジャンルであろうか。
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『劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ』
監督:大谷健太郎/脚本:本山久美子/原作:平尾アウリ
配給:ポニーキャニオン/上映時間:101/公開:2023年5月12日
出演:松村沙友理、中村里帆、MOMO、KANO、SOYO、GUMI、和田美羽、伊礼姫奈、豊田裕大、ジャンボたかお

岡山県を舞台に、地下アイドルにハマり全てを捧げている女性をメインとするテレビドラマの劇場版。といっても、推し活の独特な生態を教えてくれるわけではなく、全体的に誇張された描写のため主人公の奇人ぶり(職場での公私混同とか)も埋没しており、その辺りを期待すると肩透かし。不人気メンバーがふとしたことで注目を集める話も並行するが、メンバー同士が異様に仲良いなど、地下アイドルのリアリティにどこまで忠実なのか門外漢には把握しづらい。どうにも作り物めいていて入り込みづらい世界観なのは、善人ばかり出てきて推し活および地下アイドルの負の側面が一切描写されないからか。運営が通知しないとはいえ、台風が直撃している中でライブハウスに行って中止と知るや落胆してスタッフに謝罪させるのって、普通にクレーマーだと思うけど。
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