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【邦画】最近観た邦画レビュー--『もっと超越した所へ。』『いつか、いつも……いつまでも。』『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』『ぼくらのよあけ』

 

注意:直接的にラストには触れていませんが、未見の方はネタバレにご注意ください。

 

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『もっと超越した所へ。』
監督:山岸聖太/脚本&原作:根本宗子
配給:ハピネットファントム・スタジオ/上映時間:119分/公開:2022年10月14日
出演:前田敦子、菊池風磨、伊藤万理華、オカモトレイジ、黒川芽以、三浦貴大、趣里、千葉雄大

男の言動に対して徐々にフラストレーションが溜まっていく女の視点による4組の"カップル"の様子が描かれる。その溜まりに溜まったフラストレーションが爆発する瞬間は痛快だが、その後の(おそらく原作の演劇をそのまま映像にした)展開は、「妥協」を人間的成長のように表現する後ろ向きな姿勢のようであり、素直に拍手を送れない。まあ、「妥協」こそが恋愛の本質かもしれないという結論かもしれないけど。なお、型通りのダメ男が揃う中、千葉雄大演じるゲイの無自覚な卑怯ぶりが飛び抜けて醜悪であり、とても良かった。
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『いつか、いつも……いつまでも。』
監督:長崎俊一/脚本:矢沢由美
配給:バンダイナムコフィルムワークス/上映時間:113分/公開:2022年10月14日
出演:高杉真宙、関水渚、水島かおり、小野ゆり子、DJ松永、佐藤貢三、中島歩、江頭勇哉、芹川藍、石橋蓮司

自宅兼診療所で医師をしている男の元に、突然やってきた女が一緒に住むことになる。人の話を聞かずに喋り続ける親戚のおばさんや、露骨に敵意を剥き出しにするお手伝いさんなど、カリカチュアされた人物たちによって産み出される序盤の不穏さはなかなかだが、すぐに打ち解けて男女は恋愛未満の関係性になり、ほのぼのとした様相になるのは肩透かし。唯一残っていた不穏材料である「女が実は人妻」という要素も、男にとってあまりに都合の良過ぎるラストによって解消されるのには唖然。
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『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
監督:竹林亮/脚本:夏生さえり、竹林亮
配給:パルコ/上映時間:82分/公開:2022年10月14日
出演:円井わん、マキタスポーツ、長村航希、三河悠冴、八木光太郎、高野春樹、島田桃依、池田良、しゅはまはるみ

ある小さな広告会社のオフィスを舞台に、同じ1週間を繰り返すループから抜け出そうと奮闘する時間SF。ループを気づかせるために未来予測を繰り返すなど笑える瞬間が何度もあるし、縦社会やクライアントとの対応などの日本の会社ならではのオリジナリティも織り込まれているし、何より困難なミッションを順序だてて達成していく爽快さが心地よい。だが後半、まったくテーマの異なる、サブタイトル「上司に気づかせないと終わらない」すら無視した別の話になる。そちらも中年の夢を追った悪くない話なのだけれど、前半と後半で全く別の話をするという昨今の邦画の悪癖が現れてしまっている。
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『ぼくらのよあけ』
監督:黒川智之/脚本:佐藤大/原作:今井哲也
配給:ギャガ、エイベックス・ピクチャーズ/上映時間:120分/公開:2022年10月21日
出演:杉咲花、悠木碧、藤原夏海、岡本信彦、水瀬いのり、戸松遥、花澤香菜、細谷佳正、津田健次郎、朴璐美、横澤夏子

水の表現にこだわったアニメ映画が最近やけに多いのは『天気の子』きっかけだろうか、それとも別の要因か。大筋は少年たちのひと夏の冒険譚で、科学的設定での神経質なほどの理屈っぽさと、クラス内でハブられるなどの子供社会のリアル描写が生々しいのは、これまた昨今の風潮に忠実。ところで、特定の範囲内にある水分子を自在に操る能力って怖すぎないか。あいつがその気になれば、近くにいる人間を瞬時に殺すことができるってことだぞ。
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【お知らせ】

2022/11/06「おもしろ同人誌バザール神保町」と2022/11/20「文学フリマ東京」にて、新刊「邦画の値打ち2022」を頒布予定です。各イベントの公式サイトは以下。

おもしろ同人誌バザール|同人誌|即売会|東京都

文学フリマ東京35(2022/11/20) | 文学フリマ

 

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