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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『哀愁しんでれら』『すばらしき世界』『ファーストラヴ』『ある用務員』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『哀愁しんでれら』
監督&脚本:渡辺亮平
配給:クロックワークス/上映時間:114分/公開:2021年2月5日
出演:土屋太鳳、田中圭、COCO、山田杏奈、ティーチャ、安藤輪子、金澤美穂、中村靖日、正名僕蔵、銀粉蝶、石橋凌

序盤で主人公に巻き起こる悲劇の乱れ撃ちも、その後のシンデレラストーリーも、適度に定型をなぞった展開を見せる。ところが後半では、(特に小学生の娘・ヒカリの行動に顕著なのだが)論理の通用しない混沌とした状態に陥り、全ての他者は得体のしれない不気味な存在であると強調させられる。良くも悪くも、広告的なポップさを取り払った中島哲也監督作品みたいな様相。ただ、これだけの非論理的な混沌を納得させるためには疾走感が足りず、衝撃的なラストが単なるインパクトだけのコケ脅しと捉えられかねない危険も。
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『すばらしき世界』
監督&脚本:西川美和/原案:佐木隆三
配給:ワーナー/上映時間:126分/公開:2021年2月11日
出演:役所広司、仲野太賀、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、長澤まさみ、安田成美、梶芽衣子、橋爪功

刑務所出所者の処遇や暴対法などの現行の社会システムによる弊害を、問題提起ではなく「どうしようもなく存在するもの」として捉えている点で、西川美和監督の見つめている先はあくまで社会の外側であると確認できる。ひとりの"異端な人間"を通して、矜持を捨てて妥協を重ねることが生きるための最低限の作法であるという圧倒的な現実を、否定も肯定もせず、ただそうなのだと突きつけてくる。数々の物語で描かれた「矜持を守ったがゆえの悲劇」を見慣れた観客は、何度も理不尽を耐える主人公に肩入れしてしまうが、結局は俯瞰で映し出される状況の無残さに息を呑むことになる。そこに「すばらしき世界」とタイトルをつける皮肉が痛烈だ。
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『ファーストラヴ』
監督:堤幸彦/脚本:浅野妙子/原作:島本理生
配給:KADOKAWA/上映時間:119分/公開:2021年2月11日
出演:北川景子、中村倫也、芳根京子、板尾創路、石田法嗣、高岡早紀、木村佳乃、窪塚洋介

「自分自身の過去と向き合うことで、それとは無関係な相手についても理解できる」という謎の理論が全肯定されている時点で、物語の説得力は消失している。結局は北川景子演じる公認心理士の独り相撲が延々と続くだけなのだが、なぜかそれによって父親殺しの容疑をかけられた女子高生の心が開くのだから不思議だ。そもそも、過去のトラウマに全ての原因を委ねているのは安易であるし、それ以前に他者を完璧に理解できるものとして規定している時点で現実が全く見えていない。
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『ある用務員』
監督:阪元裕吾/脚本:松平章全
配給:キグー/上映時間:86分/公開:2021年1月29日
出演:福士誠治、芋生悠、前野朋哉、般若、一ノ瀬ワタル、清水優、北代高士、伊能昌幸、近藤雄介、尾崎明日香、伊澤彩織、高石あかり、佳久創、タカ海馬、幕雄仁、茶谷優太、大坂健太、犬童美乃梨、波岡一喜、野間口徹、渡辺哲、山路和弘

冴えない高校の用務員が、実は凄腕のアサシンだった。という中二病的な設定はさほど生かされておらず、そこへの爽快感は無いのだが、それは別として作り手の趣味が完璧な形で具現化している点で注目すべき作品。般若を筆頭に、楽しさ最優先で造形されたキャラクターたちはいずれも愛おしく、アサシンが大集合して殺し合いとなるクライマックスは、計算しつくされたアクションの連続でテンションが上がる。特に凸凹女子高生コンビの殺し屋は、多くの人が持つ「こういうのが見たかったんだ」という欲望に応えたのではないか。ちゃんと正しくパンチラするし。文脈とは無関係に殺される一般人への救いようの無さですら、なぜか美点に感じる。
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