最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。
スポンサードリンク
『かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳戦 ファイナル』
監督:河合勇人/脚本:徳永友一/原作:赤坂アカ
配給:東宝/上映時間:116分/公開:2021年8月20日
出演:平野紫耀、橋本環奈、佐野勇斗、浅川梨奈、堀田真由、影山優佳、福原遥、板橋駿谷、高橋文哉、池間夏海、ゆうたろう、高嶋政宏、佐藤二朗
影山優佳演じる伊井野ミコに本作の問題点が集約されている。初登場のキャラクターなのに映画内では説明が不十分で、原作漫画の読者でなければ理解が追い付かない。であればファンムービーに徹すればいいのに、原作とは乖離しているうえに作品内ですら性格設定が定まっておらず、後半になると他のキャラクターと行動を共にするだけの必要ない存在にされてしまっている。これでは原作ファンはおろか、影山優佳(人気アイドルグループのメンバー)のファンですら愚弄されたと感じるのが当然であろう。このように、全ての方面への無配慮だけで構成されているのが大問題で、特に原作ファンに愛されている名エピソードの粗雑な扱いは噴飯もの。コント作成の基本をシソンヌあたりに教わってくれ。
-----
『子供はわかってあげない』
監督:沖田修一/脚本:ふじきみつ彦、沖田修一/原作:田島列島
配給:日活/上映時間:138分/公開:2021年8月20日
出演:上白石萌歌、細田佳央太、千葉雄大、古舘寛治、斉藤由貴、豊川悦司、高橋源一郎、湯川ひな、坂口辰平、兵藤公美、品川徹、きたろう、中島琴音、富田美憂、浪川大輔、櫻井孝宏、鈴木達央、速水奨
冒頭のリビングのシーン。スクリーンの中で起きている複数の雑多な出来事が合わさると、なぜか調和が始まり、心地の良い空間が構築される。この辺りに、沖田修一監督の天性の才の一端が見て取れる。女子高校生が家族に嘘をついて遠出して、実の父親(しかも怪しげな新興宗教の教祖)と同じ家で暮らすというヘビーで不安を煽る展開なのに、全体を通して「楽しさ」「おかしさ」で充満させ、光り輝く青春の1ページのように仕立て上げるテクニックは驚愕ですらある。多用される水中撮影や作り込んだアニメなど、端々までアグレッシブ。
-----
『ドライブ・マイ・カー』
監督:濱口竜介/脚本:濱口竜介、大江崇允/原作:村上春樹
配給:ビターズ・エンド/上映時間:179分/公開:2021年8月20日
出演:西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、パク・ユリム、ジン・デヨン、ソニア・ユアン、ペリー・ディゾン、アン・フィテ、安部聡子、岡田将生
人は誰しもが自分を演じなくてはいけないという、現実世界を生きていくうえで逃れられない演劇的な虚構性を、まさに演劇の稽古を並行させることで露わにしたうえで、さらにその奥に潜むリアリズムを引きずり出していく。その途方もない挑戦には3時間という上映時間が必要であったし、純然たる無機物であるサーブ900の存在が生身の人間を解体していく装置として最適に働いていた。
-----
スポンサードリンク