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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『やがて海へと届く』『階段の先には踊り場がある』『香川1区』

最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『やがて海へと届く』
監督:中川龍太郎/脚本:中川龍太郎、梅原英司/原作:彩瀬まる
配給:ビターズ・エンド/上映時間:126分/公開:2022年4月1日
出演:岸井ゆきの、浜辺美波、杉野遥亮、中崎敏、鶴田真由、中嶋朋子、新谷ゆづみ、光石研

充実しているがどこか空虚な現在の合間に、不在となった親友との回想が挟まれる構成により、それでも日常はどうしようもなく続いていくという感覚の抽出に成功している。このような、ぼんやりとした不安には普遍性があり、多くの人の琴線に触れるであろう。ただ、東日本大震災なる"圧倒的な現実"を用いた種明かしと、その後の別視点による相対化によって、曖昧さが魅力であった物語には極めて説明的な解釈が行われ、作品全体が凡庸に変化してしまっている。余韻を味合わせてくれないという点では大きく不満が残る。
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『階段の先には踊り場がある』
監督&脚本:木村聡志
配給:レプロエンタテインメント/上映時間:132分/公開:2022年3月19日
出演:植田唯、平井亜門、手島実優、細川岳、朝木ちひろ、安楽涼、松森モヘー、地道元春、益山U☆G、長野こうへい、高橋良浩、つじかりん、寺田華佳、浅森咲希奈、須田マドカ、苅田裕介、大山大、野島健矢、異儀田夏葉、藤田健彦、湯舟すぴか、山口森広

源流は更に遡れるのであろうが、一応は今泉力哉作品によって邦画の確固たる地位となったジャンルの、その中でも極めて正統派の作品。客観的には不自然な関係性としか捉えられない2名が、何か意味ありげかつ適度に通じ合わない会話を繰り広げる様子を何パターンも披露しており、クスっと笑える面白さは担保されている。そのため、シーン単位では同種の既存作品と遜色なく、完成度は高い。ただ、時制が何度も飛び回り、はてはワンカットの中で時制を変化させるなどの技巧的な処理は、これはこれで最近のムーブメントとはいえ、本作に関しては何かの未熟さを誤魔化しているように感じる。その大きな一つが、海外留学のかかった成績優秀者2人について、ダンスに対する熱情が大して描かれない点であろう。結局のところ恋心以外はどうでもいいという態度も、ひとつのリアルなのかもしれないけれど。
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『香川1区』
監督:大島新
配給:ネツゲン/上映時間:156分/公開:2021年12月24日
出演:小川淳也、平井卓也

『なぜ君は総理大臣になれないのか』に続く、立憲民主党所属の国会議員・小川淳也に密着したドキュメンタリーで、今回は主に2021年秋の衆議院議員総選挙を追っている。対立候補である自民党の重鎮・平井卓也から「プロモーション映画」と言われて大島監督が激高する場面があるが、客観的に見て、これはプロモーション映画以外の何物ではなく、またそれでも構わない。映画の監督やプロデューサーが小川議員と一蓮托生のようになっている瞬間までカメラには捉えられているのだから、観客はそれを含めて各自判断できるわけで、ドキュメンタリーには真実が宿ることを身をもって体現している。その過程で平井議員の選挙における不正疑惑の一端が掴めたことは大きいわけだし、存在が必要とされる映画ではある。まあ、小川議員と大島監督が互いに相手を利用していると思い込んでいるみたいな感じだったので、老婆心ながら関係性を改めたほうがいいのではと思ったが。
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