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【小説】最近読んだ小説感想レビュー--『透明人間は密室に潜む』『ゴールデンタイムの消費期限』『孤島の来訪者』『不可逆少年』

最近読んだ小説4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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阿津川辰海『透明人間は密室に潜む』

透明人間が存在する世界ならではのトリックを用いた表題作を含む中編4本を収録。いずれも独創的なアイデアを一風変わった物語に落とし込んでいてる。砕けた文体がミステリ初心者にはとっつきやすいが、読書慣れしている人には稚拙と取られてしまう危険性も。脱出ゲーム会場で監禁される「第13号船室からの脱出」は、中編には勿体ないほどアイデアが詰め込まれていて圧巻。

透明人間は密室に潜む

透明人間は密室に潜む

 


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斜線堂有紀『ゴールデンタイムの消費期限』

ミステリ界隈の若手では頭一つ抜けた存在であり、個人的にも最近は新刊が出るたびに読んでいる著者の最新作。様々なジャンルの"元・天才"の少年少女が一同に集められ、国による再生プロジェクトを施される。映画や料理など各ジャンルの扱いが大雑把なのは気になるが、若さゆえの痛々しさも好ましい青春群像劇。

ゴールデンタイムの消費期限 (文芸単行本)

ゴールデンタイムの消費期限 (文芸単行本)

 

 

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方丈喜恵『孤島の来訪者』

タイムスリップをミステリのトリックに大胆に利用したデビュー作で度肝を抜いた著者による2作目。TVクルーが乗り込んだ孤島での完全犯罪を企む主人公だが、何者かによって先にターゲットが殺されてしまう。そこまでならありがちだが、まず中盤で明かされる犯人像に驚愕。そこから人知を超えた存在との知能戦が始まる。トリックから逆算されたような細かい設定が人工的である点はともかく、最近流行りの特殊設定ミステリの中でも、ぶっ飛び具合は桁外れの怪作。

孤島の来訪者 〈竜泉家の一族〉シリーズ

孤島の来訪者 〈竜泉家の一族〉シリーズ

  • 作者:方丈 貴恵
  • 発売日: 2020/11/28
  • メディア: Kindle版
 

 

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五十嵐律人『不可逆少年』

デビュー作『法廷遊戯』が話題となった、弁護士でもある著者の最新作。13歳の女子中学生が起こした凄惨な殺人事件(ネット生中継あり)から始まり、露わになるたびにエスカレートしていく少年たちの心の闇に息をのむ。そんな悲劇の連鎖の中で、主人公のひとりでもある家裁調査官の「やり直せるから、少年なんだよ」という信念を、それでも共有できるのかと読者に問いかけてくる。

不可逆少年

不可逆少年

 

 

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