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【小説】森見登美彦『夜行』、冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』、小林泰三『失われた過去と未来の犯罪』

久しぶりに、最近読んだ小説レビューです。3作中2作が今回の直木賞候補作ですね。

 

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 森見登美彦『夜行』

夜行

夜行

 

 

65点
今やアニメの原作者としての印象が強くなってしまった、京都を舞台とした幻想小説で一世を風靡した著者の最新作。10年ぶりに集まった大学時代の仲間が、あるひとりの画家の絵に関する不思議なエピソードを順番に話していく。かなり驚愕なオチがありつつも、それすらも包み込む幻想性のせいで不思議なトリップ感が発生する。ちょっと気になるのは、各話のラストが曖昧なまま終わっていて、余韻とは別の引っかかりを伴ってしまうところ。なんせ語り手自身は今その場にいる(無事に生き残っている)のだから、どうともとれる終わり方をされても想像が広がりにくい。

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冲方丁『十二人の死にたい子供たち』

十二人の死にたい子どもたち

十二人の死にたい子どもたち

 

 

61点
スニーカー大賞を出自としつつ多方面で活躍する著者初の本格ミステリ。ネットを介して集まった自殺志願の少年少女たち12人だが、いざ実行しようとしたところで13人目の存在がいることに気づき、誰が何を隠しているのかと推理合戦を繰り広げる。冒頭に建物の見取り図まで作るほどの本格ミステリとしての念の入れようだが、謎解きによるカタルシスよりも結局は12人それぞれの「死にたい理由」による掛け合いがメインとなっている。その肝心な「死にたい理由」が安直ではあったが。こういう話だったら、もう少し生々しさは必要ではなかったかと。

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小林泰三『失われた過去と未来の犯罪』

失われた過去と未来の犯罪

失われた過去と未来の犯罪

 

 

69点

「人間の記憶が10分しか続かなくなる」→「記憶をメモリによって保存できるようになる」という大胆な嘘を、あくまで物語を追う中で細部を詰めていくことで、リアリティを高めていく。まあ、このベテラン作家にとってはそんな程度のことは朝飯前だろうが。そうして改変された全く新しい設定世界の中で、全く新しい物語のパターンがいくつも生み出され、想像は無限に広がっていく。

 

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過去の小説レビュー

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