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【邦画】『狂覗』--「死」は最大の罰なのだろうか

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監督&脚本:藤井秀剛/原案:宮沢章夫
配給:POP/公開:2017年7月22日/上映時間:81分
出演:杉山樹志、田中大貴、宮下純、坂井貴子、桂弘

 

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70点
とある中学校の校長室にて、男性教諭が裸で縛られたうえ、瀕死の状態で発見される。女子生徒を盗撮したパンチラサイトの管理人をしていたため、生徒の誰かから制裁を加えられたらしい。学校の不祥事を隠すために警察へは通報せず、教師たちは体育の時間中にこっそり生徒たちの持ち物検査をすることにした。

映画は、この持ち物検査のシーンがほとんどを占める。最初のうちは、イジメの痕跡が見つかるものの担任は責任逃れから頑なに否定したりとか、予想の範疇の展開となる。いろいろと見つかっていくうちに、教師のほうのヤバいことが次々に露見していくのも、まあありがち。

問題児だと教師たちが決めつけているひとりの女子を除いて、生徒の名前はほとんど出ず、顔に至っては全く画面に映らない。照明を使っていないんじゃないかというくらい暗い教室内のシーンの中に、画質の悪い回想とも妄想ともとれるシーンが挟まることで、じりじりとした恐怖を醸し出す。

リアリティの話をすれば、イジメの中身がちょっとどうかと思ったりするのだが(それいくらなんでもバレるだろ、みたいなのが多い)、主題はそこではないのだろう。実はこの作品、例えば「教師は全く気付いていなかった生徒たちのモンスターぶり」とかのような、学校モノにありがちなメッセージ性は意外と薄い。もっと人間にとっての根源的な問いを持っている。

自らの全てを崩壊しかねない恐怖の存在と対峙した時に人はどうなるか、というホラー映画的な主題でいいのかな。追い込まれた人間が織りなす罪と罰が、ショッキングなラストで提示される。後半ここまでの展開は、小さな伏線を次々に回収していくことで重苦しい空気はますます濃くなり、より恐怖は増大する。

ちょっと自論を交えると、「死」を最大の罰とするところには疑問符がつくところだが。だって、アイツはこの先も生きていかなくてはいけないほうが、よっぽど地獄なのだから。この結末では「死」が救済として描かれてしまっていないか。まあこれはホラー映画というジャンルに対する批判になってしまうか。

 

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