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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『茜色に焼かれる』『夏への扉 キミのいる未来へ』『東京リベンジャーズ』『100日間生きたワニ』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『茜色に焼かれる』
監督&脚本:石井裕也
配給:フィルムランド、朝日新聞社、スターサンズ/上映時間:144分/公開:2021年5月21日
出演:尾野真千子、和田庵、片山友希、オダギリジョー、永瀬正敏、大塚ヒロタ、芹澤興人、前田亜季、笠原秀幸、鶴見辰吾、嶋田久作、泉澤祐希、前田勝、コージ・トクダ

大物政治家に夫を轢き殺されて窮乏生活を送る妻と息子の視点から、現代日本に横たわる階層社会の問題を抉ろうとする、定型の社会批判がスターサンズらしい作品。ではあるのだが、生々しいリアルと清々しいエンタメのバランスが絶妙な塩梅で、それゆえゆらゆらと揺らぐような不思議な緊張感が漂っている。主人公たちが一矢報いる相手が小物であったり、ひとつ間違えればワイドショー的な好奇の視点になりがちな点を含めて、心の底では悲劇を待ち望む観客の倫理観もまた試されている。
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『夏への扉 キミのいる未来へ』
監督:三木孝浩/脚本:菅野友恵/原作:ロバート・A・ハインライン
配給:東宝、アニプレックス/上映時間:118分/公開:2021年6月25日
出演:山崎賢人、清原果耶、藤木直人、夏菜、眞島秀和、浜野謙太、田口トモロヲ、高梨臨、原田泰造

「敵対者によって窮地に立たされた主人公が、愛する人への想いによって形成逆転する」という普遍的なストーリーの演出のための小道具としてコールドスリープやタイムスリップが用いられており、SFを過度に偏愛していないからこその良さがあった。クライマックスがタイムマシンを見つけ出した段階で、過去に戻って以降の話はエピローグでしかないという原作プロットの再構築は斬新であり、「過去で何をしようと、すでに結果が解っている」という一直線型タイムスリップものが普遍的に持つ問題を、作り手の意図とは無関係に浮かび上がらせてもいる。
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『東京リベンジャーズ』
監督:英勉/脚本:高橋泉/原作:和久井健
配給:ワーナー・ブラザース映画/上映時間:120分/公開:2021年7月9日
出演:北村匠海、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜、鈴木伸之、眞栄田郷敦、清水尋也、磯村勇斗、間宮祥太朗、吉沢亮、堀家一希、湊祥希、伊織もえ

過去を変化させると現在も変化している、いわゆる『バック・トゥ・ザ・フューチャー』型のタイムリープものではあるが、矛盾が多すぎて意味不明なことに。最大の謎は、過去を改変しているのにタイムリープをしていない人物の記憶や行動が書き換えられていない点で、タイムパラドクスの基本的な理屈を理解していない。実はこのパターンのタイムリープは物語を作るのが難しく、『夏への扉』のような一直線型のほうが辻褄を合わせさえすればよいので、脚本は練りやすいのかもしれない。あと、そもそもの始まりである主人公や元恋人が殺される理由が最後まで明かされないのは、観客に対する不誠実でしかない。
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『100日間生きたワニ』
監督&脚本:上田慎一郎、ふくだみゆき/原作:きくちゆうき
配給:東宝/上映時間:63分/公開:2021年7月9日
出演:神木隆之介、中村倫也、木村昴、新木優子、ファーストサマーウイカ、清水くるみ、Kaito、池谷のぶえ、杉田智和、山田裕貴

1日ごとにその日に起こった出来事を描いた4コマ漫画が公開される(つまり劇中と同じ時間経過を読者も共有する)という原作の特殊かつ最大の魅力は、1本の映画に押し込んだ時点で消滅してしまう。そこであくまで原作ファン向けに、新たなキャラクターと物語を付随させて元の話を膨らませる堅実な策を取っており、一応の成功は収めている。ワニが上半身裸なのはなぜか、靴を履く履かないの基準はどこにあるのか、「人は簡単に死なないよ」というセリフが冒頭にあるが彼らは人なのか、この世界でヒヨコはどういう存在なのかなどなど、ブームの外側から覗いてみると、謎は多いわけだが。
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