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【洋画】『ジオストーム』--いい年した大人の兄弟愛を再確認する一方で死んでいく大量の人々

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監督:ディーン・デヴリン/脚本:ディーン・デヴリン、ポール・ギヨ
配給:ワーナー/公開:2018年1月19日/上映時間:109分
出演:ジェラルド・バトラー、ジム・スタージェス、アビー・コーニッシュ、エド・ハリス、アンディ・ガルシア

 

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56点
最初に断っておきます。今回、科学考証からくるツッコミは控えます。それをやり始めるとキリがなくなるし、無視するのがこの手の映画の正しい作法だと思うし。モスクワに飛ばされた熱戦ビームみたいなのは何なのか、とかは言いません。そもそもあれは「気象」なのか、とか言い出したらつまらないでしょ。

 さて、時は未来。おそらく西暦2050年くらいだと予想されるが、具体的な年代がよくわからない。まあ、3年も飲んだくれていたおじさんがいきなり普段着のままスペースシャトルに乗って宇宙に行けるような、そんな未来。地球上の天気を一元管理できる気象コントロール衛星「ダッチボーイ」が暴走を始めて、世界各地で異常気象が巻き起こっているため、開発者のおじさんが乗り込んで原因究明するという話。ちなみに「ダッチボーイ」の中は人工重力が完備されている。未来すげえ。

これ、予告を観たときは本気で怖くなったのである。無慈悲で圧倒的な破壊力を持つ「異常気象」に対して成すすべもないちっぽけな人間たちが描かれている作品だと思ったから。どこにいたとしても、自分は助からないだろうなと思ったし。はっきり言っちゃうと、そんな話ではなかったわけだが。

ディザスタームービーと銘打っているが、実際は宇宙と地球(アメリカ)それぞれで「ダッチボーイ」の暴走を食い止め陰謀を暴こうとする兄弟が、互いに絆を再確認するという人間ドラマがメインなんである。世界の都市で巻き起こる異常気象は、兄弟愛の再確認のための小道具に過ぎない。

恐ろしい話である。冒頭、砂漠の中の村では600人が氷漬けにされて死んでいる。香港では、高層ビルがドミノ倒しになっているところから、おそらく4ケタの死者は出ているだろう。いい年した男2人が兄弟愛を取り戻す一方で、前半だけでそれだけ人が死んでいるのだ。人類史上まれにみる大量虐殺である。最終的には、茅場晶彦の4000人を軽く超えた死者を出している。兄弟愛の話とのバランスが取れていない。

いきなりラストの話をするが、ご丁寧なデジタル表示のカウントダウンが始まる中、人類滅亡を止めるべく半分崩壊した「ダッチボーイ」の中を進むという、ありがちではあるが手に汗握るクライマックスとなっているのである。主人公が時間に追われながら非常停止ボタン(ボタンじゃないけど)のある場所まで行こうとするシーンの最中にインサートされるのが、世界各地で始まっている異常気象の数々だ。

ここ、定石を逸脱しているのだ。どういうことかというと、主人公がカウントダウンに追われている間、リオ、ムンバイ、ドバイといった世界各地でどんどんと人が死んでいるのである。間に合ってないじゃん。カメラが追っていたムンバイの少年は助かったけど、彼の周りにはとんでもない数の死体があるぞ。

普通は、異常気象が起こる前に食い止めて、万々歳だろう。主人公の頑張りと並行して何百・何千人も人が死ぬシーンを入れ込んでしまっては、虚しさしかないではないか。あと、ヨーロッパの映像が一切無かったのは、何らかの意図があるのか。なんでか知らないけど、やけにアジアが多かったな。東京は完全に見捨てられていたようだ。

一番ビックリしたのは、崩壊する人工衛星を中継していたTV局が、リアルタイムで今まさに衛星内で起きていることを正確に実況していることである。さらに、大統領周辺でついさっき明らかにされた件も把握済みだ。一介のTV局なのに、とんでもない情報収集力である。未来すげえ。

 

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