監督＆脚本：櫻木優平／原作：クラフター
配給：松竹メディア事業部)／上映時間：93分／公開:2019年1月25日
出演：梶裕貴、中島ヨシキ、内田真礼、千本木彩花、悠木碧、水瀬いのり、津田健次郎、森川智之、水樹奈々
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５７点
またいつものツッコミを入れるだけで終わってしまいそうだが、ＳＦなら細部を詰めてほしい。内容は大昔から定番のベタなんだから、勝負すべきは練り込まれたＳＦ設定描写でしょう。そこを蔑ろにされるとねえ。
第二次世界大戦中に日本軍が秘密裏に研究していた物質転送の影響のせいで時空にゆがみが生じて、世界が２つに分裂して、それぞれの戦後を送って現在に至っている、というのが大枠の設定。一応、古谷徹のナレーションによる懇切丁寧な説明とともに地球が２つに分裂するイメージ映像もあったが、劇中では日本だけが２つになったようにしか思えない。こちらの日本とあちらの日本公国が戦うという話なのだが、諸外国の情報がひとつもないのは不自然極まりない。アメリカが黙っていないと思うんだが。個人の感情が世界の運命と直結するセカイ系なんだから、せめて世界レベルでの話をしてほしい。
こちらの日本とあちらの日本公国では相対する人間がいて、どちらか片方が死ぬと、もう片方も死んでしまう。片方が殺された場合は、もう片方は突然死だそうだ。他殺じゃない場合はどうなるのかは、一切教えてくれない。２つの世界の関係性を知っている日本公国の公卿（日本公国を陰で支配している人たち）は、こちらの日本に遠隔人型兵器を送り込んで政治的に邪魔な人間と相対している人間を殺しており、こちらでは連続殺人事件として報道されている。
はい、誰もが抱く疑問。２つの世界に相対する人間がいて、死がリンクしているというのは受け入れるとする。だけど、出生のほうはどういうシステムなの？ ２つの世界でちょうど同じタイミングで精子と卵子がくっついた瞬間に相対する人間だと決定されるのなら、まだ理解できなくも無いが、親子関係もリンクしているんだよね。つまり、誰と誰が性交して、どのタイミングで受精して、ということですらリンクするようになっていて、本人の意思ではないということである。これはもう、２つの世界をリンクさせるための「神の見えざる手」が我々の意思決定を全てを操っているとしか考えられない。戦争やっている場合でもない気がするが。もっと強大な敵がいるぞ。
簡単にストーリーを説明すると、こちらの日本では幼馴染の高校生男女が、向こう側の日本公国では公女とレジスタンスという関係で敵対している。なるほど、こちらとあちらの世界で関係性が逆転しているという話だなと思ったところで、実は日本公国は公卿に牛耳られていて公女はお飾りに過ぎず、反旗を翻すために公女も人型兵器をこちらの日本に送り込んでいたと判明する。
幼馴染の敵対関係は割とすぐに解消し、公卿という共通の敵に立ち向かう話にシフトしてしまう。人間ドラマとしての盛り上がりよりも、単純明快さを選択したということか。まあいいけど、一番観てほしいのは物語じゃなくて３ＤＣＧの技術ってことなのかな。ところで、３ＤＣＧで表現された人物っていつも、風に吹かれる柳かというくらいに妙に大きく揺れ動いているんだけど、アレは何なんだろう。
そんなこんなで反逆の事実を知った公卿は、公女を殺してしまう。同時に、こちらの世界でのヒロインも突然死する。中盤にしては、大胆な展開である。この時点で、人が生き返ることを示唆した話は出てきていないし。日本公国の公卿は、こちらの日本を属国にするべく、最新鋭の人型兵器を大量に日本の新宿に送り込む。通行人を容赦なく殺し、自衛隊も全滅させる人型兵器。その殺されている中に公卿自身や家族など大切な人と相対している人間がいるという考えは無いらしい。
さらに公卿は日本を属国にするべく、こちらの日本の総理大臣以下主要な幹部に相対する人物を皆殺しにして、政府機能をマヒさせる（どうせ平泉成が臨時総理になるだけだが。トップがすぐに決まるのが、この国の長所だ）。さらには日本公国の中でも人口の多いところを空爆して、日本において大量の突然死を発生させる。それをすることで何を狙っているのか解らない（自分が牛耳る国の人口を減らすって、どういう発想だよ）が、とにかく無関係の人たちが万単位で死んでいくという地獄絵図となっていく。
まあラストは、主人公たちがあちらの日本公国に乗り込んでいって公卿を倒して終わるんだけど。で、ヒロインの父親が自分の娘の遺体を培養液に漬けていて、よく解らないけどラストでは生き返っていて、主人公が「僕は君のことが好きだ」と告白して終わる。２人の間では全てが完結していて、なんかハッピーエンドみたいになっているけど、何万人も死んでいるからね。個人の身勝手な欲望でひとりだけ生き返らせておいて万々歳ってのは、さすがに無神経だよ。
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