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【邦画/アニメ】『GODZILLA 決戦機動増殖都市』ネタバレ感想レビュー--ゴジラの名を借りた都市文明批評だったが、概念に留まっていたのが残念であった

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監督:静野孔文、瀬下寛之/脚本:村井さだゆき、山田哲弥、虚淵玄
配給:東宝映像事業部/公開:2018年5月18日/上映時間:101分/アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
出演:宮野真守、櫻井孝宏、花澤香菜、杉田智和、梶裕貴、諏訪部順一

 

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59点
前作『GODZILLA 怪獣惑星』を当ブログで取り上げたとき、これは「もしもゴジラが○○だったら」大喜利ではないかと書いた。その続きである本作も同様で、基本的には「もしもメカゴジラが○○だったら」大喜利における、逸脱な回答である。ゴジラが人間にはどうすることもできない圧倒的な存在すなわち「神」であることを示した前フリ(前作)を踏まえれば、対抗しうるメカゴジラが、科学技術の果てにある巨大都市であるというオチは、なかなか面白い。

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メカゴジラを生成する金属が無機質なのに有機的に広がって都市を形成しているというところは、非常にワクワクしながら観ていた。その中で人間という存在が養分でしかないほど軽く扱われているのも、ビルサルドの人たちがそれこそ正しいと信望しているのも、いかにも文明批評的だ。ジェイコブズではなくモーゼス寄りの考え、ということか。(急に謎の人名が出てきて戸惑った人は、当ブログの数回前の記事を読んで下さい)

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ただ、そこまでなんである。というのも、妙に文学的というか、都市といったものが概念で終わっていて、画として見せてくれない。金属でありながら生命体のように(しかしプログラミングされたとおりに)増殖し続ける都市には冷えた怖ろしさがあるだが、それ以上のものは具体的には示されない。いきなり話が飛ぶが、ラストの戦いは結局、ゴジラvs兵器でしかない。観たかったのは「神」vs都市(もっといえば文明)だったのに。こういう概念に留める表現もあってしかるべきだが、今現在もっとも豊かな表現のできるアニメという手法を用いているのだから、もっと映像で哲学を示してほしかった。

いきなり始まる主人公の演説とかも、やはり概念に留まっている。ゴジラが倒せると説得するのなら、そんな独りよがりの吐露より先に「新しい武器が見つかった」と言うほうが先だろうに。

ともあれ、都市ですら「神」に勝つことはできなかった。というか、最終的には、ひとりの人間の「プログラミングから外れた行動」によって、都市は壊された。それもまた文明批評的であり、ここは多少は概念を超えた部分でもある。「神」と対峙するには無視すべきほどの小さな個人の感情ひとつで、全てが狂っていく。人間の存在を軽視した都市がやがてどうなるかは、モーゼスの計画した高層住宅がやがて廃墟となっていった事実からも解る。

そして次作への前フリとして示されるのが、「神」vs「神」である。もはや当然の展開であろう。エンドロール後に名前の出た「神」とは別に、原住民的な双子の美少女が声を合わせて詩を唱えている(ご丁寧に、卵がどうとか言ってる)という解りやす過ぎる前フリもあるので、もう一方の「神」も登場するのだろう。多神教の国らしい発想でもあり、ユニバース的な意味での期待値は上がっている。オチをどうするのかという関心も含めて。

 

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