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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『神は見返りを求める』『メタモルフォーゼの縁側』『恋は光』『ALIVEHOON アライブフーン』

2022年6月に観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『神は見返りを求める』
監督&脚本:吉田恵輔
配給:パルコ/上映時間:105分/公開:2022年6月24日
出演:ムロツヨシ、岸井ゆきの、若葉竜也、吉村界人、淡梨、柳俊太郎、田村健太郎、中山求一郎、廣瀬祐樹、下川恭平、前原滉

舞台となるユーチューバー界隈については実情とは異なるほど形骸化されており、おそらく主題はそこにはない。誰しもが似たようなことを経験しているであろう「純粋な好意」の提供と享受による齟齬を露わにし、コミュニケーションの限界によって産み出される悲喜劇を悪意たっぷりに描き出している。そんな人間社会のどうしようもなさに気付いた人だけが得られる小さな幸せが救いとなっているのも、吉田監督の辛辣なメッセージであろう。
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『メタモルフォーゼの縁側』
監督:狩山俊輔/脚本:岡田惠和/原作:鶴谷香央理
配給:日活/上映時間:118分/公開:2022年6月17日
出演:芦田愛菜、宮本信子、高橋恭平、古川琴音、生田智子、光石研、汐谷友希、伊東妙子、菊池和澄、大岡周太朗

ボーイズラブ漫画を通じて75歳の老婦人と17歳の女子高校生が親交していく話。趣味によって世界が広がり交流が深まる、そんなやさしく静かな世界に心地よく浸れる。その一方で、受け手から作り手に回った際のいたたまれなさ(それは被害妄想であると解っているのだが)に耐えられなくなる瞬間や、自分を被害者だと一瞬思ったあとの「ズルいのは私だ」という独白などから、あくまで内的に抱えるダメさが共感を誘う。それにしても、幼いころからスターであった芦田愛菜がここまでスター性の無い役柄を好演できるのには驚いた。
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『恋は光』
監督&脚本:小林啓一/原作:秋★枝
配給:ハピネットファントム・スタジオ、KADOKAWA/上映時間:111分/公開:2022年6月17日
出演:神尾楓珠、西野七瀬、平祐奈、馬場ふみか、伊東蒼、宮下咲、花岡咲、森日菜美、山田愛奈、田中壮太郎

「恋をしている人から光を発するのが目に見える」という即物的な嘘をひとつ導入して、"恋"とは何か改めて考察を行い、文学的あるいは哲学的に解体していく。文字数多めの会話を応酬する少し浮世離れしている(演劇的、とも言い換えられる)登場人物たちが、いずれ心の内にある"恋"を言葉で制御できなくなり、自らの俗っぽさを自覚するに至るパターンは、行儀の良さを含めて最近の流行りだが、その中でもレベルは高い。
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『ALIVEHOON アライブフーン』
監督:下山天/脚本:作道雄、高明
配給:イオンエンターテイメント/上映時間:120分/公開:2022年6月10日
出演:野村周平、吉川愛、青柳翔、福山翔大、本田博太郎、モロ師岡、土屋アンナ、きづき、土屋圭市、陣内孝則

eスポーツの世界チャンピオンであるコミュ障の若者が半ば騙される形でドリフト競技のレーサーとなり、あっという間に能力を覚醒させていく。そんな型通りの物語は気にならなくなるほど、とにかくドリフト走行の迫力を疑似体験させてくれるアトラクション映画。CGは一切使用せず、車の運転は現役のプロが行い、どこにカメラをセットしているんだという映像もふんだんに取り入れて、息もつかせぬダイナミズムを満喫できる(実際、カメラを10台以上も壊したらしい)。レースの場面では土屋圭市が解説者として状況を全て解説してくれるので、何が起こっているのかは門外漢でも把握できるし、「好きなものの魅力を多くの人に伝えたい」という情熱が映画の完成度を高めている。劇中ずっと乗り物を運転しながらドラマが進むという点で、実写映画の『弱虫ペダル』を思い出した。
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