監督&シリーズ構成:金澤洪充/原作:氏家ト全/アニメーション制作:GoHands
配給:クロックワークス/上映時間:78分/公開:2021年01月01日
出演:浅沼晋太郎、日笠陽子、佐藤聡美、矢作紗友里、下田麻美、小林ゆう、小見川千明、新井里美、加藤英美里、田村睦心、椎名へきる、斎藤千和、岡咲美保、上坂すみれ、日野未歩、白石稔、安済知佳、利根健太朗
注意:念のため、未見の方はネタバレにご注意ください。
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原作は「週刊少年マガジン」に連載中の4コマ漫画。好意を持っている女性が周囲に多数いるが朴念仁な主人公の男子高校生だけが気づいていないという、よくあるハーレム状況の中で、時に度を越えたシモネタによるオチが繰り返される。マンネリも10年以上続ければ様式美に変換されるのか、地味ながらそこそこ人気漫画の地位を確立しており、「少年マガジン」を裏で支えている作品のひとつとなっている。
週に一度の連載では、基本的に7本の4コマ漫画が掲載される。7本でひとつの話の場合もあるし、それぞれ独立している場合もある。全体を貫く大きな物語があったりキャラクターが成長したりするわけではないので、広い意味で「日常系」に含んでいいかもしれない。まあ、そもそも4コマ漫画ってそういうものだが。
TVアニメ、OVA、そして劇場版と、アニメ化は何度もされているが、基本的にはいずれも同じ構造で、原作そのままのエピソードが羅列されているだけ。一応はアニメならではの動きの要素にインパクトは与えられており、特に新聞部の畑ランコというキャラクターは本作でもアメーバ状になったりとやりたい放題なのだが、でもそれだけでは劇場版の上映時間は保たせられず、短い起承転結の繰り返しに飽きてくるのが本音だ。
2度目の映画化となる本作は、原作では連載時の7本が繋がっているエピソードを主に選んでいる。だがそれでも、各エピソード同士に繋がりは無い。ブリッジ(ハンコを押すような映像)を挟んで、全てがリセットされる。そんなに詳しくないのだが、「日常系」と呼ばれるアニメ作品でも有名どころならば、少なくとも一話ごとに全体を貫く物語が用意されている気がするが。
いくらワンパターンの日常を繰り返している原作とはいえ、10年以上も繰り返していればキャラクターの内面にも厚みが出てくるし、それぞれの関係性にも深みが発生しているのである。豊富なパターンのキャラクターが揃っている今だからこそ、オリジナル脚本の長編を制作してほしいと願ってしまう。充分すぎるほど機は熟しているのだ。
オリジナル脚本を作るのは、そんなに難しいことではない。一例だが、本作には「生徒会のメンバーを出演させて自主制作映画を撮る」話と「生徒会のメンバーを出演させてラジオドラマを放送する」話がある(78分の映画に似たような2つの挿話がある時点でバランス悪いのだが)。このどちらかの話を大きく広げて、映画全体を劇中劇のようにした入れ子構造にすれば、4コマ漫画のエピソードを散りばめるのも難しくないし、その程度のことは昨今のアニメでは当たり前に行われている。
連載が10年以上も続いている4コマ漫画なんて、貴重な財産である。一度でいいから、その蓄積された大きな力が放出される瞬間が見たい。それは無理な注文ではないはずなのだし。
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