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【邦画/アニメ】『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』レビュー--泉鏡花が14歳の女の子にされていることに何とも思わない人向けのアニメ

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監督:五十嵐卓哉/脚本:榎戸洋司/原作:朝霧カフカ
配給:角川ANIMATION/公開:2018年3月3日/アニメーション制作:ボンズ
出演:上村祐翔、宮野真守、小野賢章、諸星すみれ、石田彰、中井和哉

 

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54点
今さらながら説明すると、『文豪ストレイドッグス』とは実在の近代文学の文豪と同じ名前を冠したキャラクターが、著作に関連した”異能”を用いて戦うというアベンジャーズ型のバトルアクションのアニメ。といっても文学史への批評が含まれているわけではない。「師である太宰治を崇拝して自分のことを認めてほしいと常に願っているのが芥川龍之介」という、文学クラスタを唖然とさせるような設定が平気で出てくる(せめて逆だろ)。まあ、文豪たちはファッション的なネタ元という程度か。

文豪ストレイドッグス コミック 1-13巻 セット

文豪ストレイドッグス コミック 1-13巻 セット

 

 

泉鏡花が14歳の女の子(!)にされていることに何とも思わない人向けであろう。ボク自身は、近代文学のことは一旦忘れたうえで、単純に異能力バトルものとして面白いので、原作漫画は読んでいる。しかしTVアニメは観ていなかったため、本作の劇場版が動く『文スト』との初対面ということになった。

で、実際に劇場版を観てみたところ、まあ、一言さんお断りであった。漫画でそれなりの設定は把握しているはずだが、それでもついていけないところがチラホラ。劇場版の肝となるのは「自分自身の”異能”と戦わなくてはいけない」というところだが、そもそも誰がどんな”異能”を持っているか教えちゃくれない。別に従来のファンのみをターゲットとした閉じたサービスでもいいのだが、だとしたら主張キャラは一通り出してほしい。ポートマフィア(主人公たちと対立する組織)側のキャラクター、かなりの数がオミットされていたが。

原作しか知らない者からすると、違和感を覚えるのが、主人公の中島敦のキャラクター。やたら弱気で、妙にウジウジしていて、後輩である泉鏡花(繰り返すが、14歳の女の子である)からも叱咤されている。原作は、ここまで情けないキャラクターではないはずだが。劇場版は中島敦が過去の自分と向き合うという話なので、その前フリのために大げさにされているのだろうか。そして、過去の清算をきっかけに覚醒したかのごとく相手に向かっていくのだが、泉鏡花がその姿を見て頬を赤らめたり(それまでの描写からすると、あまりに唐突)と、なんだかキャラクターの統一感が保たれていない

あと、全体的に話が妙に観念的なのもどうかと(まあ、最近のアニメってこういうの多いんだけど)。ここにきて、近代文学が元ネタであることを免罪符にされても。まあでもラスボスである澁澤龍彦の持つ雰囲気(キャラクターとしても、元ネタとしても)と相まったストーリーはそれでもいいとして、気になったのは絵である

綿密に描かれた背景や、3DCGと思われる”異能”の動きなどは、なかなか美しく劇場ならではの迫力を見せてくれる。だが、肝心のキャラクターの絵が引っかかる。TVアニメの劇場版にありがちな「スクリーンの大画面に耐えられていない」ということなのだが、その内容が他の作品と違っていて、欠点ではあるものの、興味深い。

まず、キャラクターが画面奥にいる時に、顔がのっぺらぼうになる。もちろん引きのときは絵を単純化するものだが、顔の内部に線が一切入っていないのは非常に珍しい。シリアスな場面でもやたらのっぺらぼうが出てくるので、気になって仕方ない。逆に今度は顔のアップのときだが、線1本の太さが一定していないことがわかってくる。特に口は、おそらく唇による曲線を示したかったのか、変に波打っている。喋ると大きく動き目につくところだから、余計に気になった。

あと、これは欠点ではなく単純に面白いなあと思ったところだが、キャラクターの瞳が菱形なんだね。原作ではそんなことはないので、アニメオリジナルのデザインか。斬新ではある。

【チラシ付き、映画パンフレット】 文豪ストレイドッグス DEAD APPLE 
 

 

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