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【邦画】『春待つ僕ら』ネタバレ感想レビュー--周りのイケメンから勝手に恋愛感情を抱かれていて、本人は別のことで悩んでいる、というのは少女漫画のスタンダードなのか?

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監督:平川雄一郎/脚本:おかざきさとこ/原作:あなしん
配給:ワーナー/上映時間:109分/公開:2018年12月14日
出演:土屋太鳳、北村匠海、小関裕太、磯村勇斗、杉野遥亮、稲葉友、泉里香、泉里香、緒川たまき

 

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58点
ほとんど少女漫画を読まないし、少女漫画原作の邦画もあまり観ないので、本作がどの程度のスタンダードなのかは判断できない。パッと思いついた少女漫画原作の映画が『ちはやふる』と『溺れるナイフ』なのだが、たぶんこれらはイレギュラーなほうだろう。

春待つ僕ら(1) (デザートコミックス)

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主人公は土屋太鳳演じる内気な女子高生、春野美月。自分に自信が持てず、クラスの女子と仲良くできないことを悩んでいる。土屋太鳳にこういう役は似合わないのは解り切っていることなのだが、今回はスルーします。まあ、『累 -かさね-』で迫真の演技を見せた以降のオファーでは、徐々に改善されていくことでしょう。

さて、そんなある日、バイト先のカフェに学校のイケメン四天王と呼ばれるバスケ部男子のうちのひとり・瑠衣(稲葉友)が現れて、裏に呼び出される。どうやら四天王のうちの誰かが告白したいらしい。ところが、その竜二(杉野遥亮)の目当ては別のバイトの先輩のほうだった。本人の前で「こんなのしかいなかったんだよ」「地味過ぎるだろ」とか言い争いを始めて、美月が「いくらなんでも失礼じゃないですか」と怒ったところで、四天王のうちのひとりの永久(とわ・北村匠海)が熱い視線を送っていることに気づく。

イケメン四天王とか言っているが、話のメインは自分を変えたいという美月と、彼女に恋心を抱く永久の2人であり、あとの3人はストーリーの枝葉を彩っているに過ぎない。なお、永久の恋のライバルは後に現れるので、この四天王の中で恋のバトルは発生しない。というわけで、四天王という枠組みにあまりこだわる必要も無いのだが、それにしてもバスケなのでコートにいるのは5人なんである。チラチラとスクリーンの端っこに映る5人目のアイツは誰なのか、気になって仕方なかった。

これ、少女漫画のセオリーなのか本作が特異なのか解らないのだが、美月のほうは恋愛に関して悩むことはほとんど無いのである。前半は友達が欲しい、後半は自信の無い自分を変えたいというのが、美月にとって乗り越えるべき障害であり、四天王との交流や男から受ける恋愛感情は、これらの障害を乗り越えるための補助的な役割として機能している。イケメンから愛されていることに関しては半分無自覚に受け入れ、自分が成長するために利用するという構図は、世の女性が憧れとしているものなのだろうか。

特に前半は、ポンポンと話が進む。美月の友達が欲しいという思いは、クラスメートの山田レイラ(佐生雪)をパンケーキ屋に誘うことであっさりと解決。ところがレイラはイケメン四天王を写真に撮ることに情熱をかける変人だと解り、彼らがバイト先のカフェに入り浸っていて、美月とも親しくなっていることを知られるとマズいと隠してしまう。しかし美月が永久と喋っているところをレイラに見られて、付き合っているんだと勘違いされる。そして結局は美月がレイラに事情を話して誤解を解き、「嘘をつかれたのはショックだった」とか言われつつ、友人関係が戻る。

問題が発生→問題が解決→次の問題が発生→次の問題が解決というように高回転で処理されていくので、テンポは良いんだけど、ダイジェストを眺めている感じがする。そして映画としては中盤の、バスケの試合を観戦中に客席で写真ばっか撮っている女子生徒たちに「応援しなよ」と一括して全体をまとめることで、最初の「クラスの女子と打ち解けられない」という障害はあっさり解決するのである。ちなみに、レイラ役の佐生雪は、イケメン四天王を見て本当に鼻血を流すなど戯画的に誇張されたキャラクターで本作からは浮いているのだが、むしろ全体的にこういうテンションにしても良かった気がする。

さて後半。女の子と思っていた幼馴染がバスケ界のホープであるライバル校のイケメン高校生・亜哉(小関裕太)として美月の前に現れるという「なんじゃそりゃ?」という話になる。亜哉が美月へと積極的にアプローチしていき、恋のライバル登場に焦る永久。そんな波乱の中心にいる美月は担任から作文コンクールへの応募を勧められる。小学生の時に作文の読み方が下手でクラスのみんなに笑われたトラウマのある美月は、自身のない自分に思い悩む。

はい、またしても男の恋愛感情と美月の悩みが関係ない。そして、後半になって急に新たなトラウマが出てきている。先に言っちゃうと、美月が発表会で読み上げる作文の内容とバスケ試合中のイケメン四天王+亜哉がオーバーラップするのがクライマックスなのだが、それだったら小学生の時のトラウマは冒頭で提示しておくべきでしょう。前半ほど問題の発生と解決のサイクルは高回転ではないのだが、クラスの女子たちと完全に打ち解けたあとに、そんな新しい障害を持ち出されても戸惑う。

バスケ部の大事な試合と美月の作文発表の日が重なるということになり、ここで美月が発表をほっぽりだして会場を抜け出すとかいう展開になったら怒り狂っているところだったが、「アクシデントにもうろたえることなく最後まで作文を読み上げる」ということで成長を示したところに落ち着いていた。

しかし、こうして改めて思い返してみると、美月が自分に自信を持っていくのと、永久を含む四天王との交流は、直接的にはあんまり関係ないんである。あと、土屋太鳳が転んで土手を転がり落ちるというシーンがあったのだが、(映像を早回ししているのだろうが)ここが迫力満点であった。あれ、スタントマンの吹き替えかなあ。土屋太鳳本人だといいなあ。

 

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