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【邦画】『女々演』感想レビュー--福原遥は、顔のアップによって演技をすることができる、スクリーン向きの人

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監督:高野舞/脚本:神森万里江
配給:KATSU-do/公開:2018年3月24日/上映時間:76分
出演:福原遥、玉城ティナ、矢倉楓子、小野花梨、齋藤美咲、福山康平

 

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58点
配給会社が吉本興業グループで、監督がフジテレビのドラマ畑の人で、タイトルがこんなどうしようもないダジャレときたら、それはそれは酷い代物を想像していたわけである。で、実際に出てきたものがごく普通であったので、良い意味で裏切られたわけではあるが。あまりに普通過ぎて反応に戸惑ってしまうほど

舞台は高校の演劇部で、女5人と裏方専門の男1人という構成。文化祭の出し物(しかし高校生にもなって「白雪姫」ってどうなんだろう)でヒロインを演じる絶対的美少女が、「東京でオーディションを受けるから当日は無理」と本番直前になって言い出して、代わりのヒロインを誰にするか揉めるという流れ。推薦されたいという承認欲求はあるが自分から立候補するのは気が引けるという複雑な気持ちのため、水面下で4人の女が互いに駆け引きをしていく。

いわゆる「爽やかではない、リアルな女子高生の青春」っていうやつである。とは言っても、湊かなえとか辻村深月みたいに目も当てられないほどドロドロするわけでもなく(誰も死なないし)、青春モノとしての何か映画的な奇跡の瞬間があるわけでもなく、リアルにこだわりすぎたのか話が小さくまとまり過ぎている気がした。スマホによるLINE(のような何か)でのやり取りが現代らしいってことなんだろうけど、送信ミスから始まるゴタゴタとかも含めて、既に陳腐な表現だからねえ。

女同士の冷たいバトルの中にひとり混じっている男が、自身はそれほど動かず触媒のように作用していく感じは良かったし、おかげでストーリーに起伏も出てきた。あとこれ、演劇部の中の狭い空間でのいざこざであるかのように描いているけれど、実は最も残酷なのは外側からの視線であるというのは、メッセージ性を感じたところである

冒頭の、投票でヒロインを決めるシーンを軸にして、誰が誰に入れたんだというミステリ的な展開をメインにしたほうが、映画としてのエンタメ性が上がったのではないかと思う。TVと違って映画の場合は、多少は複雑なことをしても観客はついてこれるものだし。あと、セオリーとして、直前になって劇の台本を書き換えるのならば、これまでの経験ゆえにこういう内容になったんだということを、じっくり見せるべきだったのでは。そういうところから映画的な奇跡の瞬間が生まれるかもしれないのに。そこ、ダイジェスト的に流しちゃダメだろう。

ともあれ、メイン4人を演じる役者は誰もがそれぞれのキャラクターに入りこんでいて、それだけで鑑賞に耐えうる作品には仕上がっていた。特に福原遥は、顔のパーツの変化のさせ方のさじ加減が絶妙で、顔のアップによって演技をすることができるスクリーン向きの人であることがわかった。女子高生役ができる今のうちに、もっと映画に出てほしい。

 

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