ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『HUMAN LOST 人間失格』『羊とオオカミの恋と殺人』『漫画誕生』

最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

スポンサードリンク
 

 

 

『HUMAN LOST 人間失格』
監督:木崎文智/脚本:冲方丁/原作:太宰治/アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
配給:東宝映像事業部/上映時間:110分/公開:2019年11月29日
出演:宮野真守、花澤香菜、福山潤、沢城みゆき、千菅春香、松田健一郎、小山力也、櫻井孝宏

 

61点
ポリゴン・ピクチュアズ作品を定点観測すると、3DCGは着実に進化を遂げていると解る。『BLAME!』や『GODZILLA』3部作などでは、常にゆらゆらと揺れている人間の描写に得体のしれない気持ち悪さがあったのだが、本作の場合は自然なアニメキャラであり、荒廃した近未来の光景や非現実な怪物と同じ画面にいても違和感は無かった。もっともこれは通常のアニメに近づいているだけであり、3DCGならではの真価が発揮されるのは、もう少し先であろう。
物語については、太宰治『人間失格』の主人公の内面的な要素を即物的に表現(人間をロストすると怪物になるって…)しようとしているが、変に考え過ぎていじりまくったために、一周回っていつもの近未来SFになってしまったかのよう。

-----


『羊とオオカミの恋と殺人』

監督:朝倉加葉子/脚本:高橋泉/原作:裸村
配給:プレシディオ/上映時間:103分/公開:2019年11月29日
出演:杉野遥亮、福原遥、江野沢愛美、笠松将、清水尚弥、一ノ瀬ワタル、江口のりこ


51点
大まかなプロットはそれほど悪くはないが、いかんせん演出が何も考えておらず、おかしな描写の連続のために集中力は常に削がれる。アパートの隣に住む女子大生が華麗な殺人を犯す様子を引きこもりが壁の穴から覗くのだが、明らかに隣に聞こえる声量で心の内をすべて口に出して叫んでいるし(まず、あの壁の薄さはレオパレスでもありえないのだが)。犯行後は掃除屋が現れて死体回収と室内の清掃を行うが、犯人の自室なんだから人を殺す前にビニール敷くとかすればいいのに。
理由もなく引きこもりと殺人鬼が恋愛関係になったりなど、登場する誰しもが用意された物語の遂行のために強引に動かされているうえに、その結果として起こる事態も別段面白みのないもので、人がたくさん殺される割には淡々としたまま映画は終わってしまう。
-----


『漫画誕生』

監督:大木萠/脚本:若木康輔
配給:アースゲート/上映時間:118分/公開:2019年11月30日
出演:イッセー尾形、篠原ともえ、稲荷卓央、橋爪遼、モロ師岡、とみやまあゆみ、森田哲矢、東ブクロ、吉岡睦雄、芹澤興人、中村無何有


66点
日本漫画の始祖である北沢楽天の半世紀だが、まずは第二次大戦中に軍部に取り込まれている老年の姿から始まる。本作での北沢楽天は、新進気鋭の若手漫画家(横山隆一など)からは終わった人扱いされ、本編である青年期でも岡本一平や宮武外骨といった反骨魂の著名人と対比させられ、ヒロイックとは真逆の小市民であることが強調される。「東京パック」時代における鋭い風刺漫画家のような、一般的な北沢楽天のイメージを引っ剥がすことで、むしろ伝記映画としての説得力を増しているようだ。そんな、時代に取り残された北沢楽天が最後まで「よすが」とする相手の、皴一本に至るまでの可愛らしさに悶絶する。

 -----

 

スポンサードリンク