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【書籍】2018年2月に読んだ本『ルポ川崎』『43回の殺意』『オーパーツ 死を招く至宝』『ロートレック荘事件』

月に1回の、読んだ本の備忘録です。

 

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【ルポ】磯部涼『ルポ川崎』

主にラップ界隈を主戦場とする音楽ライターによる、神奈川県川崎市川崎区に暮らす人たちのインタビューを中心としたドキュメント。帯の「ここは、地獄か」の惹句が示すとおり、(少なくとも安全地帯でずっと生きてきたボクにとっては)予想外の貧困や暴力が、都心から電車で1時間もかからないところに渦巻いていたことに、これまでの無知を恥じ入りたくなる。希望の活路をラップに見出すのは著者のアイデンティティによるものだと思うが、全てを失った先で最後にすがるのが“文化”というのは、歴史を振り返ってみても極めて正しい。

ルポ 川崎(かわさき)【通常版】

ルポ 川崎(かわさき)【通常版】

 

 


【ルポ】石井光太『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層

そんな川崎で起こった殺人事件のルポルタージュ。被害者も加害者も中学生であったことから、大きな話題となった。主犯の少年が『ラブライブ』などの深夜アニメ好きというのは初めて知った。被害者側の親族で取材できたのが父親だけであったため、どうにもその父親目線に傾いてしまい、離婚した母親に原因があるかのような感じなのは気になるところ。たしかに子供の教育上よくない家庭環境だったかもしれないが、それと殺されたことをダイレクトにつなげるのは危険では。この点については、著者も文章中で何度も注意喚起しているが。それはともかく、『ルポ川崎』と併せて読むことで、この事件が起きてしまった「社会的要因」の一端が見えてくる。

43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層

43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層

 

 


【小説】蒼井碧『オーパーツ 死を招く至宝』

第16回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。ちなみに著者の名前は「あおい・ぺき」と読む。オーパーツ鑑定士という謎の仕事をする男と、たまたま顔が瓜二つの大学生のコンビが、殺人事件を解明していく本格ミステリ。正直、小説としての体裁は酷いもので、読んでいて苦痛になるほど。オーパーツに関する能書きはまあまあ興味深いのと、明かされるバリバリの物理トリックは確かに奇抜なので、今後の可能性を買われた感じか。それにしても、単なる大学生の割には妙にマニアックな知識のある男が、なぜ鳥は恐竜だという昨今の常識にそんなに驚くのか。

 


【小説】筒井康隆『ロートレック荘事件』

1995年初出の、筒井康隆による本格ミステリ。業界的には傑作として名高く、オールタイムベストなどにもよくタイトルが出る。実は、読んだかどうか思い出せなかったので、読んでみたという次第。結果、やっぱり読んだかどうか解らなかったのだが。この手の叙述トリックって、大量にあるもんで、どれがどれだか記憶が曖昧になるのだ。身体的欠点をミステリという娯楽に組み込むというタブーに挑戦したらしいが、別に珍しいことではないのでは。色盲とか、車椅子に乗っているとか、結合双生児とか、古くからミステリによく登場しているし。

ロートレック荘事件 (新潮文庫)

ロートレック荘事件 (新潮文庫)

 

 

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