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【邦画】『僕だけがいない街』感想レビュー--小学生時代のメインの話は青春物語としても冒険物語としても素晴らしい、のだが…

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監督:平川雄一朗/脚本:後藤法子/原作:三部けい
配給:ワーナー/公開:2016年3月19日/上映時間:120分
出演:藤原竜也、有村架純、中川翼、鈴木梨央、石田ゆり子

 

57点
意外と良かったのである。その理由は、いくつかある。

一つ目は、平川雄一朗監督、藤原竜也主演ということで、観る前の期待値が著しく低かったこと。もちろん映画というものは多人数が関わって創られるものであり、その良し悪しは複合的に決まる。なので失敗の原因を個人に押し付けるのは間違っているが、過去作から判断するに彼らは統計的に失敗作に多く関わっているという印象ゆえの、期待値の低さである。

二つ目は、すでに原作漫画を途中まで読んでいたため、作中でリヴァイバルと呼ばれているSF設定が物語のための単なる小道具に過ぎないことを、あらかじめ知っていたこと。リヴァイバルとは、つまりタイムリープのことで、「交通事故を防ぐ」などといった正解にたどり着くまである一定の時間を何度も繰り返すという主人公の特殊能力である。もしも原作未読だったら、冒頭のタイムリープを繰り返すシーンを観れば、時間SFにおける無限の可能性ゆえ勝手にワクワクしただろうし、その後の展開で大きく落胆しただろう。これはタイムリープメインの話ではない、という前知識は相当に重要だった。

そして三つ目が一番大きい。繰り返すがすでに原作漫画を読んでいたため、この話のメインとなるのが「主人公の小学生時代」という点が心配であった。本作は、母親が殺され濡れ衣を着せられた主人公の藤沼悟(藤原竜也)が、特殊能力であるリヴァイバルによって意識はそのままに小学校の頃に戻ってしまう、というのが出発点である。そこで起こる連続小学生誘拐殺人事件から、クラスメートの雛月加代(鈴木梨央)を救うというミッションをクリアするのがメインの話。そのため、「頭は大人、体は子供」という、メガネと蝶ネクタイでもしなければ無理難題に近い役柄を、子供が演じなくてはいけないのだ。この不安要素が見事に解決されていたのが、意外と良かったと感じた一番の点である。

小学校時代の主人公を演じた中川翼をはじめ、子役がみな達者なのは大前提として、けっこう抑えた演出(つまり、あまり無茶な演技をさせていない)によって、不自然さは消えていた。舞台が冬の北海道(ロケ地は長野らしいが)ということで外は雪が積もっており気温も低いため、たまに走ったり喋ったりするのがたどたどしくなるのも「寒さのせい」に見えて違和感が無かったし。また、これは今回最大の発見だが、主人公は中身が大人という設定のため、演技のぎこちなさがそのまま「大人が子供を演じていることによるおかしさ」であると解釈してしまうことで、勝手に納得してしまうものだと気付いた。となると、子役の演技で違和感がある時って、「大人の考えたことをやってるから」ということなんだろうか。

まあ子役の演技の件はさておいても、この「クラスメートの女の子を殺人犯から救う」というメインの話自体が、とにかく小学生の青春物語としても冒険物語としても素晴らしく、解決後はスッキリとした気分になるので、ぜひ皆さん観て下さい。さて、ここから先は、主に藤原竜也パートをこき下ろします。

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雛月加代を魔の手から救ったあと、いろいろあって真犯人を追い詰める小学生の主人公。で、その真犯人によって明らかに命を奪われている描写になるのだが、次の瞬間に「現在の時間」つまり藤原竜也に戻っている。えっと、タイムリープした過去で死んだ場合、現在に戻ってこれるの? 改変された現在(雛月加代は生きていて、遠因だった件が回避されたため母親も殺されていない世界)は、主人公の過去の行動によって誕生したわけだから、「主人公が死んだ」という件も引き継がれてなきゃいけないはずだし、だったら主人公はこの時間軸における「現在の時間」には、主人公は存在しないはずでは。

ワケがわからないままなのだが、話は勝手に進んでいく。で、すでに事件は解決していて真犯人もわかったあとなのに、またここから長いんだ。もう一度、藤原竜也は(なぜかビルの屋上で)真犯人と対峙するんだけど、ここで真犯人による「なぜ小学生を殺すのか」という長広舌が始まる。どうでもいいよ、そんなこと。ここの尺を削って、「あの時、殺されたように見えたけど実は生きてた」的なエピソードを挟んでくれたほうが、ずっといいよ。

そして、ここまで劇中でほとんど無かった、藤原竜也に絶対にやらせちゃいけない「泣き叫ぶ演技」が発動されそうになるのだ。いや、この映画の小さな好ポイントに、藤原竜也に感情を出す演技をそんなにさせていないってのがあったんだけどなあ。真犯人が喋るに連れて、次第に顔が歪み、涙が出てきて、どんどんと「泣き叫ぶ演技」発動に近づいていく。この時、劇場にいた全ての観客は「頼む藤原竜也、泣き叫ばないでくれ!」という思いでひとつとなった。実際はボクだけかもしれないけど、そう錯覚した。

まあ、泣き叫ぶんだけどね。

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原作漫画 

僕だけがいない街 (1) (カドカワコミックス・エース)

僕だけがいない街 (1) (カドカワコミックス・エース)

 

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