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【邦画】『セーラー服と機関銃 -卒業-』感想レビュー--なんでみんな、橋本環奈に気を使っているのだろう

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監督:前田弘二/脚本:高田亮/照明:佐藤浩太/原作:赤川次郎
配給:KADOKAWA/公開:2016年3月5日/上映時間:118分
出演:橋本環奈、長谷川博己、安藤政信、大野拓朗、武田鉄矢

 

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54点
映画が始まっていきなり、橋本環奈が機関銃を乱射して「カ・イ・カ・ン」とつぶやく。えーと、お目当てのシーンがもう出ちゃったんだけど、このあと2時間、何を目的に観続ければいいのだろうか。というように、しょっぱなから観客の出鼻をくじくように始まるのが、本作『セーラー服と機関銃 -卒業-』である。

「カ・イ・カ・ン」のシーンは橋本環奈が授業中に寝ている時の夢であるが、すぐにそれが過去に実際に起きた出来事だと明らかにされる。この映画は橋本環奈演じる星泉が目高組四代目組長に就任して、対立する浜口組に乗り込んで機関銃を乱射して、そのあと色々あって目高組を解散して現在は商店街で元組員たちと一緒にカフェを経営している、というところからスタートする。つまり橋本環奈は、とっくに「カ・イ・カ・ン」経験済みという設定。ベースが後日談なため、これでは成長物語にできない。

ただ、橋本環奈の佇まいには異様な貫禄がある。武田鉄矢ら元組員を従えていても、伊武雅刀率いる組に乗り込んで啖呵を切っても、別に違和感はない。かつての薬師丸ひろ子みたいに、組長を襲名させられて戸惑ったりとか、そういうウブな演技は却って難しいのかもしれない。だったらこれで良かったのかもしれない。

でもこれだと後半の、組員たちが死んで取り乱して「お前ヤクザだろ」みたいな感じで叱責させられるシーンとの辻褄が合わなくなるんだけど。とっくに「カ・イ・カ・ン」経験済みなんだよ橋本環奈は。そのあとの宇野祥平の死体を埋めるシーンでの、だんだんと朝日が昇る光の使い方は素晴らしすぎるのにもったいない。(実はこの映画、全体的に照明がめちゃくちゃ良い)

さて、本作は80年代の角川映画が得意とした直球勝負のアイドル映画である。アイドル映画とは、不慣れな演技や、監督からの無茶な要求などを健気に頑張るときに思わず出てしまう「素の表情」なんかを楽しむものである。ところが、そんなアイドル映画としての醍醐味が、本作にはあまり感じられない。橋本環奈が、照橋心美(by『斉木楠雄のΨ難』)ばりの完璧美少女だからだろうか。多少はあるかもしれないが、それ以上に、スタッフが橋本環奈に気を使い過ぎているのが、理由のようである。

ストーリーも、そうだ。あれだけの銃撃戦に巻き込まれ、さらには敵の本拠地に機関銃を持って乗り込む(ビルのセキュリティとかにはツッコんではいけません)のがクライマックスだが、実は橋本環奈は劇中で一人も殺していない。誰か殺さなきゃいけない展開になると、すかさず別の誰かが手を汚すようになっている。橋本環奈には人殺しさせちゃいけねえという、神の意思が働いているかのようだ。アイドル映画なら欠かせない、「性的イメージを想起させるもの」を関わらせて表情を楽しむというものも、ラブホテルではしゃがせるとか、その程度。

あと不満なのは、橋本環奈の顔のアップが全然無いんだよね。スクリーンで観る意味ないじゃん。「かわいい女の子を眺めていたい」というアイドル映画においては当然の要求すら拒否されるのは、どういうことか。そういえば、かなり変なタイミングで一瞬パンチラが映るが、遠景なので本当にパンツだったのかも疑わしい。これじゃ素直に喜べやしない。

そしてエンディング。橋本環奈がこっちを向いて『セーラー服と機関銃』を歌い始めた時、「これを待ってたんだよ」というゾワゾワ感で満ち溢れたが、すぐに画面は真っ黒になりスタッフロールが流れ、観ているこっちは醒めてしまう。歌っている橋本環奈をずっと流してくれよ。それすら許されないのかよ。

せっかく角川40周年だというのに、みんなして橋本環奈におそるおそる接しているからか、「素の表情」が出そうな瞬間は排除されている。そのため、魅力が伝わってこない。橋本環奈の何に怯えているのか、とも思うが、この周囲を問答無用にひれ伏させる謎の力こそ、橋本環奈の最大の魅力なのかもしれない。そう考えたら、なんか末恐ろしくなってきたな、橋本環奈。

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原作小説

セーラー服と機関銃・その後――卒業―― (角川文庫)

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