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【洋画】『ガール・オン・ザ・トレイン』--いわゆる本格ミステリは、映画というジャンルには不向きではないか

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監督:テイト・テイラー/脚本:エリン・クレシダ・ウィルソン/原作:ポーラ・ホーキンズ
制作国:アメリカ/配給:東宝東和/公開:2016年11月18日/上映時間:113分
出演:エミリー・ブラント、レベッカ・ファーガソン
ヘイリー・ベネット、ジャスティン・セロー、ルーク・エヴァンス

 

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53点
映画とミステリの相性は悪い。洋泉社のムック『映画秘宝EX 最強ミステリ映画決定戦』の柳下毅一郎と真魚八重子による対談や、ミステリ映画特集が組まれた「ハヤカワミステリマガジン」2016年11月号の座談会においても、近い話が出ている。特に犯人当てなど謎解きが物語のメインとなる、いわゆる本格ミステリは、映画というジャンルには不向きではないか。思うに、唯一解を見出すまでのあらゆる可能性を検証しては捨てていくという地道な論理的作業は、映画という表現で行うと途端に退屈になってしまうのだろう。

それでも映画において本格ミステリを体現した作品もある。ただそれは、制約の多い映画中で過不足なく論理を構築するという、相当な根気が必要な作業である。安易に「意外なオチ」を最後に持ってきて、宣伝文句で「衝撃のラスト」とか言うだけで、本格ミステリになるわけではないのだ。

というわけで『ガール・オン・ザ・トレイン』も、犯人当てを売りにした映画である。「ラスト10分の衝撃」という宣伝文句のみならず、最後の最後で「意外な犯人」が明らかにされるという、創っている人たちは本格ミステリのつもりであろう作品だ。主人公のレイチェル(エミリー・ブラント)は酷いアルコール中毒で、酒を飲むと記憶が無くなってしまう。そのため、ある事件の犯人ではないかと周囲から疑われても、その時の記憶が無いため、きちんと否定できない。状況証拠は彼女の不利になるものばかりで、警察などの周囲の人間はどんどんと彼女を追い詰めていく。

面倒なんで詳細は省略するが、なんだかんだで「意外な犯人」が明らかになるわけである(まあ、ミスリードかと思うくらい伏線が多いので、意外でもないけど)。で、この手の映画でありがちなのだが、これ誰が犯人であっても、話の辻褄は合ってしまうのだ。作中の描写から「意外な犯人」が一人に絞り込めない時点で、本格ミステリではない。

「犯人当て」に主眼を置いて本格ミステリぶるよりも、そいつが犯人であることで世界がどのように変換するかのほうに重きを置いたほうが、映画としての価値は上がるはずなんだけど、本作にはそれが無かった。抜け落ちた記憶というのは前例も多いけど面白くなるテーマなのに。「酒って怖いなあ」という感想以外に、本作に何を見出せばいいのか。

ともあれ、本格ミステリを映画でやるのは難しい。本気で取り組む気がないなら、別のアピールポイントを設けてほしい。

 

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