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【邦画/アニメ】『傷物語 III 冷血編』--映画でしかできないこと、アニメでしかできないこと

映画 邦画 アニメ

f:id:yagan:20170116230201j:plain総監督:新房昭之/監督:尾石達也/原作:西尾維新
配給:東宝映像事業部/公開:2017年1月6日/上映時間:83分
出演:神谷浩史、坂本真綾、堀江由衣、櫻井孝宏

 

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72点
映画の価値とは何であるか。いきなり大層な問いを持ち出してしまったが、とりあえずひとつの基準として「映画でしか表現できないこと」がどれだけ含まれているかで、映画の価値を計ってもいいのではないか。といっても、小説や演劇などといった表現方法と比較しようとしても、そもそもの形態が違うために「映画でしか表現できないこと」を推し量るのは難しい。というわけで、もっとも映画と似た形態であるTVと比較するのが妥当であろう。

なんだかよくわからないことを言っているようだが、実際に「これはTVでは放送不可能だ」という理由で映画としての価値を認める人は少なくない。最近では『アイアムアヒーロー』とか。映画というものは、物理的には何の変換をすることなくTVに流すことができる。だとすれば別の理由でTVに流すことができないならば、映画としての価値が上がると考えるのは、間違ってはいない。ほとんどの場合、それは「倫理的」かどうかで決まるのだが。

さあ、前置きが長くなったが『傷物語 Ⅲ 冷血編』である。人気アニメシリーズの映画化。長大な物語の初端にあたる。おそらく観客の過半数は原作を読んでいるだろうし、そうでなくても阿良々木暦ほかすべての登場人物の「その後」がどうなるかは観客のほとんどが知っているだろう。そんな『スターウォーズ ローグ・ワン』と同じような、結論が周知の事実という状況で、本作は何を見せたのか。

グロである。それもアニメでしか表現できないグロである。人喰いも切り株も実写映画でいくらでも表現されてきた。しかし頭が吹っ飛ばされた瞬間にすぐまた頭が生える、しかもそれが短時間に繰り返されるという描写は、実写では不可能だ(CGを駆使しで同じものを創ったとしても、嘘っぽさが勝つであろう)。しかも頭が吹っ飛ぶというひとつの現象だけでもいくつもの表現パターンをこしらえている。不死身の吸血鬼同士の対決というのは、「アニメでしか表現できないグロ」のための設定に過ぎないとすら思わされるほどだ。『テラ・フォーマーズ』を黒塗りだらけにしたような今のTVでは、間違いなく放送不可能である。

最後のバトルの舞台が旧国立競技場だったりと、深読みさせるような仕掛けが多くあるのだが、圧倒的なグロの前ではどうでもよくなる(というか、記憶に残らない)。あと、実は「冷血編」は過去2作に比べてもギャグが少ない。というか、中盤の「阿良々木と羽川によるエロシーン」にのみギャグ要素が集約されている(前2作は、少ないながらもギャグの位置はばらけていた)。ヲタ目線で言えば「堀江由衣にそんなセリフを言わせるなんて」ということなのだが、でもここ、いつ悲劇に転じてもおかしくない緊張感が常にあるのだ。なんせ阿良々木は、人を喰う吸血鬼になりつつある状態だし。

『傷物語 III 冷血編』は、映画でしかできないこと、アニメでしかできないことの両方を、ゲップが出そうなほど過剰に取り込んだ。それだけで、映画としての価値も、アニメとしての価値も、充分にあるということだ。

 

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 前2作

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