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【邦画】『さようなら』--映画史に残る「死」の描写だろう

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監督、脚本:深田晃司/原作:平田オリザ/照明:永田英則
配給:ファントム・フィルム/公開:2015年11月21日/上映時間:112分
出演/ブライアリー・ロング、ジェミノイドF、村田牧子、新井浩文

 

まず個人的なことで恐縮だが、ロケ地が地元だった。劇中で流れる盆踊りの曲、よく知ってる。たぶん今でも踊れる。あんなところに原発作ったのか。海もないのに。

さて、あらすじ。日本国土の大半が放射性物質で汚染され、政府と各国の協議のうえで日本人たちが次々と難民として世界各地へ散らばっていく近未来。ずいぶんと人も少なくなったが、元々外国からの難民であったターニャ(ブライアリー・ロング)には順番がなかなか回ってこない。幼い頃から身の回りの世話をしてくれるアンドロイドのレオナ(ジェミノイドFという本当のアンドロイド)とともに、周りに何もない草原の一軒家で静かに時が経つのを待っている。

日本人が難民する側になったという話のため、タイミングよくセンセーショナルな作品となってしまっているが、本来の狙いはもっと根源にあるだろう。ぜひ作品を観たうえで知ってほしいのでぼかした書き方にするが、ターニャの出身国や日本に難民としてきた理由と、それを知った恋人の敏志(新井浩文)の顔。そして原発政策の失敗で国民すべてを難民にしてしまった日本。国家という大きすぎる事情がダイレクトに個々の人生を狂わせている。

「国家:個人」とともに、本作にあるもうひとつの大きな対比が「生:死」である。いつか死ぬ人間といつまでも死なないアンドロイドが常に対比されるのは当然のこと、体が弱く本人の覇気のなさもあって今にも死ぬのではないかと思えてしまうターニャと、そのターニャへ生きる意味を与えているようで唐突に本人が死に急ぐある人物も、「死」という点で大きく対称的である。

ラストには、映像の力を駆使して、ある「死」の様子を延々と描写する。死ぬことのないアンドロイドがその様子をじっと見つめていることも含めて、映画史に残る「死」の描写だろう。あとでCG一切なしで撮影したと知って驚愕した。あれ、チョコレートなんだって。

 

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深田晃司監督 過去作。個人的には『歓待』のほうが爆発力があって好きです。 

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