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【新書】最近読んだ建築関係の新書レビュー--東浩紀&大山顕、森山高至、田村圭介&上原大介

建築 新書 

 最近読んだ建築関係の新書レビューです。たまには建築関連の話題もしないとなあと思って。

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・幻冬舎新書 403
『ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都市
 東浩紀、大山顕

77点
『動物化するポストモダン』で一世を風靡した硬派の社会思想家と、「工場萌え」ブームの火付け役でもあるデイリーポータル系のライター。そんな生きている世界が違うかのような2人による、ショッピングモールをテーマにした対談集なのだが、見事に都市文明批評として確立している。ショッピングモールはイスラム起源だとか、ふざけているようでいて次々と確信を突いてくるセンテンスが飛び出してくる様はスリリングですらある。内に閉じた建築批評界からは無視されているショッピングモールなるものが、実情として今の世界で最も求められている建築である事実には、そろそろ見ないふりをしている場合ではないと思うのだが。「外側がバックヤード」という表現には、ボクがショッピングモールモールに抱いていた何とも言えない気持ちへの回答そのもので、非常にすっきりした。そういえば建築デザイン科の学生だった頃、地方のショッピングモールを肯定するレポートを提出したら「個性がない、地域の風土を壊す」みたいなことを講評に書かれていたことがあったっけ。日本全国どころか世界のどこでも「ある程度のルールが統一された街」を作り出せるというある種の無個性は、むしろ歓迎すべきことなのだろう。

ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都市 (幻冬舎新書)

ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都市 (幻冬舎新書)

 

 

 

・光文社新書 802
『非常識な建築業界 「どや建築」という病
森山高至

68点
新国立競技場問題において真剣を持って暴れまわったことから注目された建築エコノミストによる、建築業界の内幕を暴露した本。あの時、あらゆる建築関係者が同業どうしで内輪話をしている中、この人だけが一般の建築素人に向けて情報を発信していったのが、少なくともザハ案撤回の一因にはなったと思う。あの安藤忠雄の会見を見て「安藤忠雄をよく知らない人がこれを見たらどう思うか」という想像ができなかった建築関係者があまりに多かったとき、さすがにヤバいと感じた(安藤忠雄が構造とか予算とかの知識がないことは、ボクらにとっては当たり前だが一般の人は違うのに)。本書は、設計コンペから施工現場まで、建築に関する様々な実情を示して、いかにこの業界が「内側しか向いていない」かを暴露していくのだが、注目すべきは具体的なエピソードとして著者の実体験を多く出していること。これによって説得力がグンと増している。そしてやっぱり、あくまで建築業界の「外側の人たち」に向けて発信していることで、著者の存在感は大きくなっている。

非常識な建築業界 「どや建築」という病 (光文社新書)

非常識な建築業界 「どや建築」という病 (光文社新書)

 

 

 

・SB新書 337
『新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか』
田村圭介、上原大介

 55点
駅に関する著書をいくつか出している一級建築士と、「新宿ダンジョン」というRPGゲームアプリを世に出した沖縄在住のゲームクリエイターによって、新宿駅の迷宮っぷりを紹介している。ゲームクリエイターの上原大介が新宿駅で迷った経緯から「新宿ダンジョン」開発過程を書き、一級建築士の田村圭介が解説を行うというスタイル。これ、いろんな意味ですごいのは、一応ボクは毎日のように新宿駅を利用しているのだが、それでやっと書かれている内容に追いつけるくらい難解なところ。読みながら記憶を手繰り寄せて「この文章に書かれているのは、あそこの通路か」という手順をいちいち取らないと、何のことが書かれているのかわからなくなる。新宿駅にそんなに行かない人は、書いてある内容が理解できないに違いない。これは文章力とかが理由ではなく、新宿駅の地下通路が人知を超えた経緯で増殖し続けているからだろう。地下通路の形状を「田・ラ・み」の3つの文字に当てはめるあたりは巧いなあとは思ったが、基本的には新宿駅マメ知識という話が多く、都市の発展における批評性までは到達できなかったか。というか、正直言って「新宿ダンジョン」開発秘話は、迷ったとか足が痛いとかそんなんばかりで文章もたいして面白くない。

新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか (SB新書)

新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか (SB新書)

 

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